©100マイル地元食
EPISODE #160
【1月ダイジェスト】初めての土地に愛着を感じる理由
大きく世界を広げて日本中を飛び回った1月。100マイル(160.9km)の範囲を意識しながら訪れた土地では、個性豊かな食べ物を通して、素敵な法則に気が付くことができました。
今回は、関東、沖縄、北海道を舞台にした1月の挑戦をまとめたダイジェストです。
帰省中の関東で迎えた新年。生まれた町、育った町、今も住んでいる町。すべての町に好きな所があって、心からホッとできる場所ばかりです。それぞれが個性的な異なる場所ですが、なぜ同じように好きになるのか、共通点はあるのでしょうか。
一番わかりやすい共通点は、その町で生活した時間です。その町に住み、歩き、空気を吸って、生きてきた時間。ゆっくりと積み重ねられた時間の中で、町への愛着が育っていくのです。そして、やはり食生活も町を好きになる大切な要因です。地元の食べ物を食べる何気無い時間も、知らぬ間に町への愛着を強くしてくれます。
ですが、初めて訪れた旅先でも同じような愛着を感じることがあります。1月に訪れたいくつかの町は、何年も過ごした土地のように身近に感じられました。もしかすると、食べ物を通してその土地を体験する100マイル地元食だからこそ、感じられたのかもしれません。
年末年始の帰省で帰った関東地方。例外ルールで100マイル地元食の挑戦は一時中断したものの、せっかくなので、もし実家の横浜でチャレンジしたらどうなるか、調べてみることにしました。横浜は大都会、食料の生産はほとんどしていませんでした。地元の食べ物を探しに行きました。
まず、生きていくために絶対必要な塩を探して、鎌倉を訪れました。小さなお土産屋さんで売られていたのは、地元の相模湾の海水を薪で焚いて作った自然塩でした。他にも鎌倉には、地元農家さんの野菜が並ぶ「鎌倉市農協連即売所」や、地場スーパーの「鎌万」がありました。
鎌倉は小さいですが魅力的な町です。今では、千年の歴史が作る懐の深さと、温かい海沿いの気候で観光客だけではなく、移住先としても人気だそうです。山に囲まれた町の中に、食べ物を作る生産者さんと、それを食べて生活する消費者がいる。そんな生産と消費のバランスが良い地域でした。
100マイル地元食ルールでの沖縄旅行にも出かけました。いつも通り、初日の夕飯の試練を乗り越え、見慣れぬ食べ物を拒む長女(3)をなんとかなだめ、レンタカーを走らせ沖縄の食べ物を探し回りました。冬が旬の美味しい島野菜や、色とりどりの海産物に心が躍ります。
「ミートショップがなは」で買った“やんばる島豚あぐー”の塩焼き、初めて見つけた100マイル内の材料だけで作られた「The Cheese Shop」の “沖縄産手作りチーズ”。どちらも自分たちの足で見つけた、掛け替えのない宝物です。
長男(6)の念願だったミーバイの塩釜焼きに挑戦しました。豊富に地元の海水で作られた自然塩がある沖縄ならではの贅沢な料理でした。塩の生まれる場所を見に、沖縄の海そのままの塩 “ぬちまーす” の工場を見学しに行きました。
沖縄では、地元の海や畑を大切している生産者さんたちのおかげで、美味しい食材に溢れていました。そして、沖縄に住む消費者が、地元の食材や食文化を大切にしていることもよく分かりました。こんな土地に住んでみたいと少し心が揺らぎました。
初めて訪れた町でも、自分が生まれ育った土地のように愛着を感じる理由が少しだけわかってきた気がしました。生産と消費の両方がバランス良く存在する町には、どこか温かい雰囲気が漂っています。地域の中に、作る人の思いやりと食べる人の感謝が一緒になって回っている気がするのです。
初めて訪れた鎌倉や沖縄は、そんな素敵な雰囲気で私たちを迎えてくれました。まるで、ずっとその土地に住んでいた馴染みのお客さんが来た時のようにです。その町の食生活をめぐる幸せな関係に共感し、仲間に入れてもらえる喜び。それが私たち旅行者が感じる愛着だったのです。
逆に北海道のことを考えれば、消費者としての我が家は迎える側になります。地元の原料にこだわって味噌を作っている服部醸造さん や、日高の地魚の美味しさを伝える高槻商店さんと、我が家の関係は旅行者にとって魅力的に映るのでしょうか。自分が住む町を楽しんでもらうために、消費者ができることもありそうです。
外の世界を見てくることで気が付いた、土地に魅力を感じる理由。さらに愛着がわいた地元を舞台に、2月からも挑戦を楽しんでいけそうです。