100マイル地元食ルールの沖縄旅行から札幌に帰るも、興奮冷めやらぬ日々。早く日常生活に戻らないと、いつまで経っても上の空です。そんな時は、北国にしかない食べ物を食べるに限ります。よし、魚を買いに行こう。

今回は、再び訪れた東静内の高槻商店で買えた変わった魚のお話。

北風の日は太平洋の高槻商店へ

沖縄では、長男(6)と長女(3)が “やんばる島豚あぐー” にハマったことで、ずっと豚の塩焼きを食べていました。最高に旨い豚ですが、毎日となれば話は別。札幌に帰ってくると、またいつかのように、無性に北国の魚が食べたくなりました

この日吹いていたのは優しい北風。北風が吹けば逆側の南の太平洋が穏やかになります。向かったのは、東静内の大好きな魚屋さん、高槻商店でした。札幌から苫小牧まで来ると、予想通り波がほとんど無い静かな太平洋が見えてきました。美味しい魚との出会いを確信します。

初めて高槻商店に来たのは昨年の11月でした。すぐまた来るぞと心で誓いつつも、片道3時間の道のりはそうそう気軽に来れるものではありません。あれから2か月が経っていました。店に着いて、気恥ずかしくなって、覗き込むように店の中の様子を伺いました。

高槻商店
看板の無い魚屋 東静内の高槻商店
店主堀田さんとの再会

店主の堀田さんは、どうやら先に来ていたお客さんのお会計中の様子。次は私の番だと勇気を出して中に入りました。

「あ、鈴木さんいらっしゃい。」

信じられないことに、顔と名前を憶えていてくれました。そうだ、前回、名刺交換もしたし、Facebookでお友達にもなっていたんでした。

堀田さんが言うには、この日は海が穏やかで船は出られたものの、残念ながら水揚げが極端に少なかったそうです。それを聞いてがっかりしている私を見て、まずいと思ったのか、堀田さんが言います。

「面白い魚ありますよ。見ます?」

来た来た!それを待ってました。お店の軒下にある作業場に、フタがしてあるトロ箱がありました。開けてもらって中を見て、一歩後ずさりしました。中身は1mはある、立派で不気味なサメ、アブラザメでした。

アブラザメ全身
中から現れたのは1mのアブラザメ
グロテスクなサメが美味しそうに見えてくる

「サメ、食べたことあります?この辺だと、けっこう食べるんですよね。」

(これは試されている...?)「いえ、無いですけど、食べます!」

「わかりました!じゃ、捌くんで近くで写真撮ってて良いっすよ。」

ニヤリとした堀田さんは、手際よくスピーディーに、かつカメラに気を配って作業を始めました。頭とヒレと内臓を取り除き、大きなペンチでしぶとく張り付いている皮を剥がします。中から現れたのは、グロテスクな見た目からは想像もつかなかった、紅白幕のように鮮やかな模様の身でした。

サメの皮剥ぎ
皮を剥ぐのが本当に大変

ぶつ切りにしてくれた断面は、雪のように真っ白です。白身と呼んでいいのかわからない、見たことも無い身質。夢中でシャッターを切りつつも、どんどん美味しそうな姿に変わっていく解体ショーに感動していました。やっぱりプロの技術はすごい。

サメの白身
鮫肌の中から現れた美しい白身
魚の価値を高めてくれる魚屋のプロの技

サメは、たっぷり大きな切り身を2つもらいました。他にも、ホッケの干物も薦めてくれます。だけど、やっぱり塩の問題で買えません。すると、生のままの干す前のホッケもあるとのこと。では、我が家で自ら干物にするので、開く作業だけお願いすることにしました。

ホッケを捌く
プロは一刀で決める

まな板にホッケを置くと、小さな包丁で頭からズバッ。ただの一振りでホッケは見事に開かれました。身の切れ目には少しの乱れもありません。そして、プロの技はまだ止まりません。背骨の下にいくつか包丁を入れ、シャワーヘッドをあてると、中に残った血が抜けていきます。

ホッケの血抜き
最後までしっかり血抜きをする

「ここまでやらないと臭いが残っちゃうんですよ。このホッケ、安くはないから美味しく食べて欲しくて。」

2回目の来店で見せつけてくれた魚屋さんの技とプライド。この魚屋さんは、魚を仕入れて手を加えて売るという、自分が責任を持てる短い時間の中で、しっかりと価値を上乗せしてきます。これがプロフェッショナル。私の頭の中では、確かにスガシカオの曲が流れていました。

高槻商店の2人
高槻商店の若きプロたち 左が店主堀田さん