©100マイル地元食
EPISODE #152
【沖縄旅行】長男が夢見たミーバイの塩釜焼き
2回目の100マイル地元食旅行の行き先はどこにする?決め手は塩でした。沖縄はたぶん日本で一番海水塩を作っている土地です。そして、沖縄に行けたら、叶えてあげたい長男(6)の夢がありました。
今回は、旅行4日目のバーベキューでミーバイの塩釜焼きを作ったお話。
「魚の塩釜焼きって結婚式の料理、お父さんとお母さんの時も食べたの?」
テレビで見かけたスズキの塩釜焼きの紹介を、長男(6)はどう理解したのか、結婚式で食べる料理だと思い込んだようです。
「塩釜焼き食べたいから、早く結婚したいな。」とまで言っています。
長男よ、結婚とはそういう動機でするものじゃないんだよ。でも、豪快でワクワクする不思議な魚料理を食べたいという彼の好奇心は大切にしてあげたかった。
「沖縄行ったら、魚の塩釜焼きが作れるかもよ。」
こうして2回目の100マイル地元食旅行の行き先は沖縄に決まりました。スカイツリー下のソラマチの塩屋(まーすやー)に並んでいた、沖縄県の地元の海水で作られた塩たち。沖縄は間違いなく、海水塩の王国でした。
北海道でも海水塩はあります。でも大量の塩を使う塩釜焼きを作るには少し高価すぎます。我が家で一番使っている岩内町の海洋深層水から作られた “星の塩” は、100gで400円ぐらい。1g4円です。沖縄でこれより安い塩を見つけないといけません。
地元で愛される沖縄のスーパー、サンエーの塩売場にも、たくさんの地元の塩が並んでいました。北海道と比べるとこれだけで楽園に見えます。でもほとんどの塩は、“星の塩” と同じぐらいの価格。旅行中に愛用した “ぬちまーす” も1g4円ぐらいでした。
ただ唯一、安かったのが、“沖縄の海水塩 青い海” でした。1g1円です。調べてみると、糸満(いとまん)沖2,000mの海水を機械化された工場で製塩しているのでコストが下げられているようです。たくさん使う塩釜焼きにはもってこいの塩でした。思い切って1kg買いました。
沖縄に冬の寒さをもたらした北風で、海も荒れていました。漁師さんも船を出せないのか、第一牧志公設市場にも鮮魚は多くありませんでした。そんな中でも、新鮮な魚を並べてくれていた新垣鮮魚店で、ミーバイを買いました。ハタの仲間は白身魚で塩釜焼きに合うはずです。
“青い海” 1kgに玉子の白身3個分を混ぜて粘土状にします。アルミホイルの上に塩を広げ、頭と尾と内臓とウロコをとったミーバイをのせて、上から残りの塩をかけ、大きな塊にしました。長男(6)と長女(3)は興味津々の様子で見つめています。
この日もまた、“やんばる島豚あぐー” と牛小間肉のサイコロステーキを食べている子供たち。その横でアルミホイルに包まれたミーバイの塩釜が静かに焼かれています。妻と私だけのご馳走、イセエビの鬼殻焼きが美味しく焼き上がっても、塩釜焼きは完成しません。中が見えないので焼き加減がわからないのです。
途中、ひっくり返しながら30分ほど焼いたでしょうか。意を決して開いてみることにしました。ここでやっと子供たちが手伝ってくれます。しっかり固まった塩釜を、フォークでバンバンと叩いて割ってくれました。中から真っ赤なミーバイの皮が現れると、爽やかでふくよかな香りが立ち上ります。
よく塩を払って、ふっくらと蒸し焼きになった白身を長男と長女に取り分けます。一口目は2人らしく慎重に、味を確かめると二口目は口を大きく開けて食べます。
「おいしい!もっとちょうだい。」こんな遠くまで来てやっと作れた料理。嬉しい反応でした。
残り少ないミーバイを妻と私で分け合って食べます。塩釜の効果なのでしょう、南国の魚らしく淡泊であっさりした白身は、持ち味を少しも逃がさずにしっとりと焼き上がっています。沖縄の海の恵みを凝縮したワイルドですが繊細な味です。
だけど、食べ終わった後で、塩釜を捨てる時の罪悪感は相当なものでした。1kgも塩があれば、1か月以上も生きていけるのに...この料理は特別な日だけにとっておきます。
※食べる時は、塩釜を叩いて割って、身に着いた塩をよく払ってから食べる