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EPISODE #63
【お料理】迷ったら贅沢アクアパッツァ
結婚記念日の買い出しでやっと見つけた、この時期の北海道ではなかなか買えない鮮魚。しかも真鯛。どうやって料理するか迷います。
一緒に買えた、白貝や3種類の海老たち。こんな時、どうやっても失敗しない、簡単ですがとびきり美味しい得意料理があります。
今回は、真夏の日本海の海の幸と、あの思い出食材を使ったアクアパッツァのお話。
前日の日本海ロングドライブで買えた真鯛。ちょっとだけ刺身で食べていましたが、しっとりプリプリとした身の旨味は素晴らしかったです。これは今日のお料理にも期待が持てます。今日の食材たちはとっても贅沢です。浜益の白貝、増毛のボタン海老、増毛縞海老、ゴジラ海老の新活エビ3兄弟もいます。
それぞれ料理しても絶対美味しいのですが、面倒くさいので一気に料理してしまいたい。そんな時にとっても便利で大好きなメニューが、アクアパッツァです。イタリアの伝統料理で、白身魚と貝、海老などをトマトやオリーブと一緒に白ワインで煮込んだ料理です。
以前、東京で働いていた時、青山のお気に入りのお店、トラットリア・フィレンツェ・サンタマリアで食べた味が忘れられず、自分でも作るようになりました。
本場イタリアの一般的な作り方は、丸のままの白身魚と魚介を焼いて、白ワインと水とトマトを加えて、さっと火を通して出来上がりです。煮込み料理というより、さっぱりと新鮮な魚介を楽しむ料理のようです。
ですが、我が家では魚介を食べるだけじゃなく、スープも楽しみたい。なので、しっかり出汁をとる方法にしました。真鯛の頭と骨、海老の殻を圧力鍋で煮出します。スープを濾してみると、骨も殻もほろほろ崩れるほどに柔らかくなっています。これならしっかりとダシが出ているでしょう。
これでけでも美味しいのですが、甘味も欲しくなりました。小さく刻んだ留寿都のよしかわファームのにんじん、江別の宮川農園のキャベツ、玉ねぎ、家庭菜園で作った調理用トマトを入れてじっくり煮込み、野菜の甘みを足します。味付けは塩だけ。他の味は全部食材が出してくれています。だから失敗しない。
お義母さんがプレゼントしてくれた深めの平鍋を初めて使いました。米油を多めにひいて、半分に切って潰したニンニクと、刻んだ自家製サン・ドライド・トマトを入れて最弱火で温めじっくり香りを引き出します。
ニンニクがこんがりしたら中火にして、焼尻島の真鯛の切り身を皮目から焼きます。ひっくり返したら、周りに白貝と活エビ3種を並べます。藤野ワイナリーの白ワインを入れたら、野菜たっぷりのスープもかけます。あとはフタをして白貝が開くのを待ちます。
白貝が開いた瞬間、とっておきのあの野菜を入れます。ルスツ野菜直売マルシェに参加してくれた石崎農園さんの塩トマトです。以前から、さっと火を通すだけで甘味、酸味、旨味が何倍にもなることを知っていました。焼くだけでご馳走になるトマト、結婚記念日翌日のディナーでも活躍してもらいます。
塩トマトは火が通るとトロトロに柔らかくなります。その瞬間に火を止め、ちぎったフェンネルと刻んだパセリを振りかけ完成です。せっかくなので鍋ごと食卓に出します。妻が焼いた食パンもトーストにして添えました。
まずスープだけを飲んで、濃厚な真鯛と海老のダシを感じます。少しも生臭くなく、むしろ爽やかな海辺の香りです。その後に、たっぷり入れた野菜の甘味や酸味が複雑で深い味わいで追いかけてきます。
次に具を楽しみます。ふわふわ柔らかい真鯛、プリプリの白貝、それぞれ個性が違う3種類の海老。前日まで生きていた新鮮な食材だからこその力強い味わいです。そして、塩トマト。とろけたトマトの果汁に魚介の塩気と旨味が加わり、その一口だけで、1つの完成されたスープ料理のようです。今回は、完全に塩トマトが主役になっていました。
この日の夜から、私だけ4日間、家を離れる予定がありました。圧力鍋にたっぷり残った真鯛と海老と野菜のスープ。やっと家に帰った時、取っておいてくれていると思っていました。「え、全部食べちゃったよ」と妻。美味しい料理と妻を残して遠出してはいけません。
※こんなにいっぱい入れてますが、材料はその時にある魚介と野菜で大丈夫です。味付けも分量にこだわらず味見しながら薄めに決めてください。にんにくと白ワインとトマトさえあれば、ちゃんと美味しくできます。