MENU

TOP
【ストーリー】直売マルシェが感動する理由

EPISODE #54

【ストーリー】直売マルシェが感動する理由

2017.8.29

ストーリー

感動を言葉で伝えるのは難しい。感動した理由を伝えるならなお更です

留寿都村の農家さんとの直売マルシェの後、ずっと書くことができませんでした。それは、あの感動がどこから来たのか、なかなか説明できなかったからです

今回は、農家と消費者が一緒に挑戦したマルシェのお話。

心配だったお客さんの反応

これまでも、野菜を自分の手で売ったことはありました。手に馴染んだ仕事が、今回はどこか恐ろしかった。我が家がこれまで素晴らしいと感じた、農家さんから直接買うという体験が、普通の消費者さんにはどう感じられるのか。全く予想できなかったからです。

札幌駅から大通駅まで伸びる広大な地下広場。昼12時の集合時間より早く、吉川さんご夫妻、石崎さんご夫妻が到着しました。野菜農家さんが、農作業で一番忙しい夏に、畑を離れることはほとんどありません。それだけ、特別な1日だということです。

じゃがいも、スイートコーン、大豆などを生産されている、よしかわファームの吉川さん。塩トマトとミニトマトを作っている石崎農園の石崎さん。どちらも農業で生きていくと決めた若い農家さんたちです。

手掘り新じゃが3種の量り売り、海水の塩分で育てる塩トマト、朝もぎのスイートコーンにミニトマト、他にも来ることができなかった他の農家さんの野菜たち。全てがびかびか。テーブルや木箱に大事に並べていきます。個人的には、すべて100マイル内の野菜です。

どんどん売れるルスツ野菜

開店の午後1時を前に、大変なことが起きました。準備中だというのに、店の前に人だかりができたのです。農家さん、そして野菜ソムリエの皆さんのセンスで格好よく配置された売り場。通りすがった方たちも興味津々です。

準備が終わらないのに、人だかりはどんどん大きくなります。パニックに似た興奮の中、開店のカウントダウンです。それでは始めます!言ったそばから商品に伸びる手。どれも普通の野菜ですが、見るからに特別な野菜。周りに畑が多い札幌でも、これほど新鮮な野菜を見ることは滅多にありません。

目と舌が肥えたおば様がた、子供に美味しい野菜を食べさせたいお母さん、キャリーバッグをひいた観光客、皆が目を輝かせながら、野菜を買っていきます。少な目に持ってきた、スイートコーン、ほうれん草や米ナス、ブロッコリーが、あっという間に売り切れてしまいました。

食べて感じてもらうミニトマト

そんな中で、ミニトマトの売れ行きがちょっとゆっくりでした。朝もぎの完熟ミニトマト、1g1円の値段でも決して高くはない商品です。この日、石崎さんはミニトマトに賭けていました。持ってきたのは50kg。売れ残ってしまえば、もう商品として売ることができません。

石崎さんと相談して試食販売に切り替えます。朝もぎ完熟のミニトマト、食べたお客さんから、美味しい!甘い!驚きの声が上がります。それまでのスローペースがなんだったのか、飛ぶように売れていきます。袋詰めが間に合わないほどに!

そんな時でした。お客さんの「美味しい」という言葉を聞いた石崎さんご夫婦が、こう言います。「あ、このミニトマト、美味しいんだね」私には、お客さんの良い反応は予想通り。作っている石崎さんにも当たり前だと思っていました。

農家さんにとっても特別な体験

今年から農業を始めた石崎さんだと言っても、ご自分が作ったトマトの美味しさはわかるはず。これまでも出荷しているのだから、商品の良い評価も聞いたことがあったはずでした。ですが、消費者が目の前で試食をして、美味しいと喜んで買っていく、こんな体験は初めてだったのでしょう。素直な喜びがこぼれ落ちます。

横目で吉川さんご夫妻を見ます。こちらも100kgもの新じゃがを持ってきていました。「こんな綺麗な美肌のじゃがいも見たことない!」というお客さんに、作り方のこだわりや美味しさ、おススメの食べ方を伝えています。ご夫妻とも活き活きしています。

私は、このマルシェが始まるまで、お客さんの反応が成否を決めるとばかり考えていました。ですが、それが全てではありませんでした。この日、一番感動していたのは、農家さん達ご自身のように見えました。

感動は接点で生まれ双方向に伝わる

人間は、好きだと思った相手を喜ばせたい。相手も感動してくれれば自分も嬉しい。そう考える生き物だと信じています。それは、農家さんと消費者の間であっても同じなのかもしれません。農家さんは、消費者に美味しく食べてもらうために、一生懸命に野菜を作っています。この日も、野菜が一番美味しい朝4時から収穫を始めてくれていました

そして、消費者の視点に立ってもそれは同じ。買ったものが美味しいというだけが、感動ではありません。新鮮で特別な野菜を買えた喜び、試食したミニトマトの美味しさ、それを伝えた時の農家さんが喜ぶ顔を見る。これも消費者の買い物の感動の1つだったんです。

感動は、異なる人間同士の接点で生まれ、双方向に伝わる。これまで、我が家が

100マイル地元食を通じて感動してきた理由が、またちょっとだけわかった気がしました。この感動は、消費者の私たちの中だけでなく、生産者さんとの間で共有していたものでした

この気付きは、これからの我が家の100マイル地元食生活の、そして、私のこれからの人生の進むべき道を教えてくれました。そんな素敵な1日になりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


前の記事へ

次の記事へ