©100マイル地元食
EPISODE #16
昔の友と酌み交わす海の恵み
北海道-道北エリア
6月
厚田港と増毛での食材調達から戻った私と高校時代からの友人の青木君は、買ってきたシャコとエビで一杯やりたくてしょうがありません。
この日は、もう1組のゲストがいました。友人の遠藤夫妻とその娘さんです。奥さんが私と青木と高校の同級生で、旦那とも何度か会ううちに自然と仲間になっていました。青木君の北海道入りに合わせ、北海道旅行中だった遠藤一家も我が家に立ち寄ってくれました。
100マイル地元食を実践する中で、ゲストを家に招いて、体験や感動を共有することは、欠かせない楽しみの一つです。さて、この日の漁の成果たちの評価はいかがでしょうか?
まず、遠藤家には前日に少しだけ残しておいた、神恵内のカキとホタテを、それぞれ蒸しと焼きで食べておいてもらいます。このメニューには絶対の自信があります。美味しい!予想通りの反応に、まずはホッとします。
その間に、シャコの皮を剥いていきます。キッチンバサミでまず頭を落とし、次に胴体の両サイドを切り落とします。そうすると背側と腹側の皮がきれいに剥けます。厚田港朝市のシャコ母ちゃんの言う通りです。
ボタンえび、甘えび、増毛縞えびの活えび3兄弟は、そのまま皿に盛って出します。それぞれ異なる殻の形や色、模様がまた楽しい。殻は、自分で剥いて食べてもらいます。
最後にもう1品。魚介の残り物アヒージョです。アヒージョは、スペイン料理で人気の小皿料理で、オリーブオイルとニンニクで、エビや貝、肉や野菜を煮込んだものです。パンに具をのせ、オイルを染み込ませて食べるとワインに最高に合います。
今は、オリーブオイルの代わりに米油、具には、ホタテのひも、ツブ貝刺身の残り、魚の切れ端に肝、何でも使います。そして、合わせるのは自家製で毎日焼いている食パンに、国稀酒造の純米酒です。
この人数のパーティーだと小さすぎるテーブルに、全てのメニューが並びます。椅子が足りずに脚立に座っている人もいます。これがまた楽しい。まずビール、といきたいところですが、100マイル地元食ルールに合ったビールがまだ見つかっていないので、日本酒で乾杯します。
国稀酒造の辛口山廃純米酒は、純米酒らしく、口に含んだ瞬間に強いどしっとした旨味を感じます。しかし、それだけではなく、ほのかな酸味、甘み、渋みも一緒に口の中に広がります。最後には、余韻だけを残して、さっと切れ上がる。見事なお酒です。
シャコは、メスのポリポリした数の子のよう卵の歯応えも、オスのしっとりほどける身の味わいも素晴らしい。この繊細な味わいは、世界で最も、見た目と味のギャップが大きい食べ物の1つでしょう。
待っていました、活えび食べ比べ。まずは甘えびから。これまで、刺身の盛り合わせに控えめに並んでいたあの白い細いえびです。しかし、これはまったく違う。しっかり弾力があって太い身、ですが甘みは更に強く感じます。こんな甘えび初めて食べます。ボタンえびは抜群の安定感。プリプリの身、ミソのコク、やっぱり好きです。
最後に増毛縞えび、初めて食べるえびです。身の食感は、ボタンのプリプリを超える、ブリブリの強い弾力。味もしっかり濃厚です。少しの生臭さも無い、爽やかな香りが駆け抜けます。これはやられました。遅すぎた出会いを後悔してしまいます。このえびは、今後もっと有名になるかもしれない。でも、そうなると手に入らなくなるんじゃないか、そこまで気になってしまう、新たなNo.1の誕生でした。
シャコ、エビ、食べるたび、酒が進んで、食欲も増すばかり。そこで魚介の残り物アヒージョの登場です。油で煮ることで具材のエキスが中に閉じ込められ、噛んだ瞬間、ジュワっと溢れ出ます。そして、油に塩気に炭水化物。美味しくないわけがない。嫌いな人がいるわけない。
この日の夕飯は、軽く済ませないといけませんでした。なぜなら、それから夜の札幌で、寿都町の大串さんと作戦会議の予定が入っていたからです。すすきのの居酒屋で待ち合わせます。寿都町から3時間、大串さんは仕事が終わってから駆けつけてくれました。本当に熱い素晴らしい人です。
我が家の100マイル地元食ルールでは、仕事の会食や、親戚や友人との急な食事では、例外として外食を認めています。全ての外食を例外無く禁じてしまうと、人生を有意義にするために重要な交友関係だけでなく、100マイル地元食の実践のために欠かせない方たちとの繋がりも絶ってしまうからです。
打ち合わせには、大串さん、青木君の共通の友人の釣り大好き田嶋さんも飛び入り参加してくれました。全員同年代で魚好き、話が尽きる訳がありません。明日は、朝から卸売市場に行くというのに、どんどん夜は更けていくのでした。
シャコと活エビ
魚介の残り物アヒージョ