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EPISODE #248
家でもできる!本格お味噌
北海道-道央エリア
10月
お味噌汁や煮物、焼き物と和食には欠かせない調味料であるお味噌。もしいつも食べているお味噌が、地元の生産者さんたちとの思い出があふれた食材に変わったとしたら、毎日の食卓がもっと幸せなものになるはずです。お味噌はシンプルな材料を使って、どんなご家庭でも作ることができる、おすすめの発酵調味料です。今回のブログでは、我が家がこれまで何度も仕込んできたお味噌の作り方をじっくり紹介します。
※大豆は、黒豆やその他のお豆に代えたり、ブレンドすることもできます。
※米糀は、玄米糀や、麦麹に代えたり、ブレンドすることができます。ちなみに米で作られたこうじを「糀」、麦で作られたこうじを「麹」と書くそうです。
① 大豆を水洗いしてから、水に半日浸します。
大豆は汚れがついていたり、ごみが混ざっていることがあります。そのため、何度か水を変えながら洗います。水に浸す際は、2~3倍に大きく膨らむので、大きめのボウルで水をたっぷり入れるようにします。
② 大豆をたっぷりの水で弱火で3時間ほど茹でます。
湯が沸くまでに、泡のようなアクがたっぷり出て吹きこぼれやすいので、目を離さずにアクを取ります。その後は、ふたをして大丈夫です。親指と小指で挟んで簡単に潰れる柔らかさになったら茹で上がりです。
※我が家では時間短縮のために、圧力鍋を使って茹でています。それだと20分ほどで茹で上がるのですが、最初にアクをとってからフタをして圧力をかけないと、茹で汁が噴き出して大変なことになるので注意が必要です。
③ 大豆を取り出し、ペースト状に潰します。
この後の工程で、他の材料と均一に混ぜるために、しっかりと大豆を潰しておきます。あればマッシャーを使って潰し、無ければ丈夫なビニール袋に入れて手で圧し潰しても良いでしょう。また、大豆が熱いままだと、この後で混ぜるこうじに含まれる酵素や菌を壊してしまので、30℃程度まで冷ましておきます。それと、茹で汁も後で使うので捨てずに取っておいてください。
※我が家では、作業の時間と手間を省くために、この後の⑤の工程でフードプロセッサーを使って、一気に混ぜてしまいます。プロから見たら邪道かもしれませんが、熱い大豆を手で潰す作業をせずに、出来上がりのお味噌も美味しいので気にせず機械に頼っています。
④ 米糀と塩を混ぜます。
糀は、コウジカビの白い菌糸に包まれて塊になっています。この工程でばらばらにほぐしておくと、後の工程でも均一に混ざりやすくなります。白い胞子がぼわっと舞うのを楽しんでください。
⑤ ③の茹で大豆と④の塩と米糀を混ぜます。
茹で大豆と、米糀、塩と均一に混ぜることで、ムラなく発酵が進み、傷まずに美味しいお味噌を作ることができます。取っておいた茹で汁を足して、なめらかなペースト状になるよう調節します。
※我が家では、作業の時間と手間を省くため、フードプロセッサーを使っています。この場合は、茹でてから冷ました大豆をそのまま混ぜることができるので、作業はかなり楽になります。
⑦ ビニール袋に詰めて容器に入れ、常温で2~3カ月保管する。
発酵で活躍する酵素や菌類は、酸素が無くても活動できるので、悪さをするカビや雑菌が混入しないように、また匂いが漏れないように、ご家庭ではビニール袋に詰めて密閉して保管することをおすすめします。袋に詰める際は、トントンとテーブルに落として空気をよく抜きます。袋だけでは破けてしまいそうで不安なので、フタ付きのガラス容器やタッパー等に入れておきます。
人間が生活するのに心地よい20℃台の気温が、発酵にも適しています。家の中で温度が保たれていて、直接日が当たらない場所を探して、置いておきましょう。温かい季節なら3カ月ほど、北国の寒い季節なら半年もすれば味噌ができあがります。発酵と熟成が進む中で、少しずつ色が濃くなっていって、変化が楽しめますよ。
※我が家では、熟成期間を短縮するために、⑥で混ぜ合わせたペーストを、ヨーグルトメーカーで35℃24時間温めて、発酵を促進させます。翌日に袋に詰める際には、すでにお味噌のような香りが漂い始めているのがわかります。その後、⑦と同様に熟成させますが、数週間から1カ月ほどは熟成期間を短縮できているような気がします。
我が家でお味噌を作り始めた頃には、手作りしたお味噌には、食べる瞬間まで糀が生きていると信じていました。でもそれは間違いでした。糀、つまりコウジカビという菌類は塩分に弱く、仕込みの最中に塩と混ぜられた時点で死に絶えてしまいます。え?コウジカビがいないのに、なんで糀の力で味噌になるの?と、真実を知った時には目の前が真っ暗になりました。
発酵に役立っているのは、コウジカビが作りだして残してくれた酵素の力です。これらの数多くの酵素は、デンプンやタンパク質を分解して、甘みや旨みを作ってくれます。また、米糀に一緒に含まれる乳酸菌や酵母菌は、コウジカビの酵素が分解してくれた成分を糖類などをエサとして利用し、副産物として複雑な香りや深みのある味わいを形作る成分を作り出します。
コウジカビは、生きて味噌作りに直接かかわることはできませんが、乳酸菌や酵母菌へとつながる発酵のバトンリレーの第一走者として活躍しているのです。
以前、香川県の小豆島にあるヤマロク醤油の伝統的な木桶を使って醤油を仕込む醸造蔵を見せていただく機会がありました。お味噌と醤油は、材料も発酵の工程もほとんど同じです。そこで驚いたのは、木桶そのものや、蔵の壁にびっしりとフワフワしたものが付いていたことです。それは、発酵で活躍する菌たちでした。
伝統的な製造方法では、材料を仕込んだ木桶にフタをせずに熟成します。コウジカビが残した酵素が仕事を終えると、次の菌たちが勝手に飛び込んで活躍を始めるのです。蔵に住み着いた菌の個性によって、できあがる味噌や醤油の味が決まります。つまり、蔵の味が何世代も受け継がれていくのです。
ご家庭で楽しむ味噌作りでは決して真似のできない、100年単位の時間を積み重ねてきたからこそできる発酵の技でした。どんな環境でも地道に仕事をして美味しい発酵食品を作ってくれる菌たちには感謝です。