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お母ちゃんの山盛りトマト

EPISODE #35

お母ちゃんの山盛りトマト

2017.7.24

食材調達,シーズン1

 普通に都市で生活していると、食べ物を作ってくれる生産者さんの顔を見ることは、なかなかできません。この食べ物を誰が作ってくれているのか、知らずに食べていることがほとんどです。

 100マイル地元食の楽しさの1つに生産者さんとの出会いがあります。そして、その出会いは突然で様々、幸運としか言えない時もあります。

 ですが、そんな出会いは決まって、自分の足(車)で苦労して探したからこそ、巡り合えたものばかりです。だから止められない。

直売所探しは空振りの旅

 生産者さんに会いたいからと言って、畑や牧場、漁港にまで押しかける訳にはいきません。お仕事を邪魔してしまうからです。なので、直売所を探します。その方法は、インターネットかガイドブックしかありません。

 ですが、生産者さんはインターネットでの発信が苦手なのか、情報自体が少ないだけでなく、数年前の更新が最後で、最新の状況がわからないものばかり。また、直売所のガイドブックは数少なく、やっと見つけた本も10年近く前の出版です。

 こうなると、何が起きるかと言うと。見つけた情報を頼りに直売所に行ってみると、営業していない、見つからない、マンションが建っている、など様々。情報を見つけた直売所の半分近くは、空振りに終わります。

 そして、この日もそうでした。

壮瞥は火山が産んだ農産物の産地

 この日は、札幌市から南南西方向、太平洋側にある洞爺湖の東岸、壮瞥町でした。有珠山などの活火山が育んだ火山灰の水はけの良い土と、温暖な気候は、この土地を農産物の一大産地にしました。

 ガイドブックで見つけた、壮瞥町の農家さんが営む、採れたての野菜を販売する直売所を目指していました。ですが、やっとのことで見つけて店内を覗いてみると、ほとんど野菜が並んでいません。札幌から110㎞、完全な空振りです。

 このまま、何の収穫も無ければ、帰りの運転が頑張れません。ここからは、自分の目と、直感と、幸運を信じて、見つけたところに飛び込みます。運転すること10分、壮瞥町もそろそろ抜けるかと思っていたころ、その直売所に出会いました。清水農園直売所でした。

清水農園のトマト母ちゃん

 道沿いにある個人経営としては大きめの建物です。店の前に何台か停まった車の先に、確かに山積みのトマトが見えました。これは当たりかも。急いで車を停め、妻と子供たちと店に入りました。

 店内には、季節の野菜、綺麗に箱に詰められたトマト、トマトジュース、たくさんの商品が並んでいます。ですが、主役は、何と言っても山積みになっている不揃いの量り売りトマト。1kg380円の文字が光っています。

 この日、必ず買いたかったトマト。それはトマトソースを作るためでした。優しく挨拶してくれたお母さんに、そのことを伝えると、だったら量り売りトマトでいいよ、とすすめてくれました。

 2kgぐらいあれば十分にトマトソースが作れる。2kgぴったりになるように量って、お母さんにこれくださいなと言います。ですが、お母さんは、完熟したトマトはすぐ傷んじゃうからもっていきなと、ポイポイ選んで放り込みます。せっかく、几帳面に2kg選んだのに...

 最後には2.8kgに、ですが代金はきっかり2kg分。お母さんの優しさに応えたくて、1ℓのトマトジュースも買います。そして見つけたのがサクランボでした。聞くと、息子の奥さんのご実家がサクランボ農家で、一緒に販売しているとのこと。札幌で買うよりはるかに安い。運転中のおやつに買いました。

再会の約束と驚きの味

 清水農園さんは、10月頃までいろいろな野菜を売っているそうです。また来たいな、そしてまたお母さんからトマト買いたい。また1軒、大好きな生産者さんの野菜が買えるお店ができました。お母さんとの別れを惜しみつつ、またすぐ来るよと約束します。

 次の直売所を求めて、運転を始めた私たち。先ほど買ったサクランボを食べます。一口噛んだ瞬間、果汁が噴き出します。鮮烈な甘みとしっかりとした酸味。味が濃い、今まで食べた中でも一番の美味しさでした。

お母さんの直売所の底知れない魅力に、一遍に虜になってしまいました。こんな出会いがあるから、直売所探しドライブは止められないのです。

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