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EPISODE #106
【お料理】思い出ローストポークは再現できるか?
塊肉を丸ごと焼くのは男の浪漫です。野外でのBBQなら炭火の魔力が助けてくれますが、キッチンで作るのはなかなか難しいものです。
試行錯誤の末に行きついた、焼いて、茹でて、また焼くという調理法。今回は、思い出の味の再現に挑んだ、ローストポーク作りのお話。
思い出の中の味は、いつまで経っても、鮮明に覚えています。でも、だいたいは実際よりも美化されて、世界で最高の味だと信じ込んでいるものです。ですが、私がずっと追い求めているあの肉の塊の味は、文句無しに今までで一番の味でした。
今年の夏、両親や妹夫婦、たくさんの甥と姪と、河原でBBQをした際、偶然できたローストポークの味が忘れられないのです。豚肩ロースを炭火の強火で表面だけをこんがり焼き、アルミホイルに包んで網の上の火が弱い場所に置いて1時間放っておきました。
そろそろかと開けてみると、プルプルトロトロに柔らかくなっていました。味付けは、塩と砂糖だけでしたが、溢れ出た肉汁に溶けて、絶妙な味わいのソースになっていました。すでに焼き肉でお腹いっぱいなのに、むさぼるように食べ切ってしまいました。
実は、あの味が忘れられず、何度か我が家のキッチンでも作ってみました。河原BBQと同じ手順を再現するため、フライパンで焼き色を付けて、オーブンでじっくり焼く。ですが、何度やっても、固い、生焼け、あの柔らかさが再現できませんでした。
今回は新しい方法を試します。フライパンとオーブンの間に、圧力鍋で茹でる工程を加えたのです。行きつけのコープさっぽろ二十四軒店で買った、かみふらのポークの肩ロースを使います。上下前後左右、全ての面に焼き色を付けてから、圧力鍋で15分茹でます。
その間に、BBQソースを作ります。北の大地マルシェの新生姜と香味野菜を刻み、赤ワインと日本酒、十勝ヒルズのきんとき豆の酢、はちみつ、砂糖を混ぜます。柔らかく茹で上がった豚肉に塩を擦り込んでから、ソースに漬け込んでおきます。
1時間ぐらい置いて味が染み込んだら、オーブンで最後の仕上げです。今までは180℃で30分ぐらいでしたが、今回は圧力鍋で中まで火が入っているはずです。150℃で20分にしてみました。調べたどんなレシピにも従わず、独自製法です。
先にじっくり焼いておいた留寿都よしかわファームのじゃがいもを端に寄せ、真ん中に塊肉をドンと置き、上からソースに漬かった刻み野菜をのせて一緒に焼きました。今回はなんとか柔らかく焼けていて欲しい。祈るような気持ちで、オーブンを開けました。
焦る気持ちを抑えて、肉汁を落ち着かせるため、アルミホイルを巻いて10分待ちます。まな板の上に置いて、包丁で切り分けます。スッ...明らかに今までのゴリゴリの手応えと違います。これは軟らかい!煮詰めておいたソースをかけて完成です。
周りはしっとりトロけるような軟らかさですが、中はちょうど良い火加減のピンク色で、旨味豊かな肉汁をたっぷりと蓄えています。あの日のローストポークとは少し違いますが、これはこれで素晴らしい出来栄えです。
そして、何よりも感激したのはBBQソースでした。塊肉をマリネしたことで、豚の脂のコクを引き継ぎながら、はちみつと野菜の甘味、お酢の酸味が鮮烈です。これはどんな肉料理にも絶対に合う。むしろこのソースだけでご飯が食べられます。
河原BBQのローストポークの味は思い出として大事にしておくことにしました。思い出の味を超える必要なんてありません。だって、またこんなにも美味しいローストポークができたんだから。しかも、絶品BBQソースのおまけ付きです。
キッチンでローストポーク (3人分)