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EPISODE #135
【お料理】出がらしバーベキュースペアリブ
仕方なく「スープ」を取るために使ったスペアリブを、バーベキュー味のご馳走にしました。使った後の “出がらし” にも美味しく生まれ変わるチャンスがあります。
今回は、残った食材で作ったバーベキュースペアリブのお話。
クリスマスディナーで作った自家製ハム、火を通すために、お湯ではなく「スープ」を使ってじっくり加熱しました。ただのお湯ではハムの旨味が溶け出してしまうので、旨味たっぷりのスープを使おうという訳です。
賢い方法でしたが、100マイル地元食ルールでは、市販のスープの素なんて買えません。そこで使ったのがスペアリブでした。圧力鍋で、スペアリブと香味野菜を茹でた煮汁が「スープ」になりました。そして、今回の主役は “出がらし” の肉と野菜です。
以前から、下茹でしたスペアリブにバーベキューソースをたっぷり塗って焼く、アメリカ流のバーベキューが大好きでした。これまでも、何度か100マイル圏内の食材で、ソースの味を再現しようとしてきました。今回も懲りずに “出がらし” で再挑戦です。
“出がらし” と言えば、和食の出汁を取るための、かつお節と昆布を思い出します。我が家がある北海道では、かつおが獲れないので、代わりに鮭節を使っています。これがなかなか買えない貴重品です。そして、北海道がいくら、日本を代表する利尻、羅臼、日高、真昆布が採れる昆布天国だと言っても、昆布も粗末に使えるものではありません。
我が家では、味噌汁の出汁を取った後の鮭節と昆布を、もったいないので刻んで、そのまま味噌汁の具にしてしまいます。1回出汁を取ったぐらいで、まだまだ美味しさを内に秘めた “出がらし” を捨てるのは忍びないのです。
高級料亭なら、一番出汁をとったら、潔く “出がらし” は捨てるのでしょうが、家庭ではそうはいきません。今回の、スペアリブの「スープ」の “出がらし” だって、まだまだ美味しいはずです。肉はそのまま使って、くたくたに煮込まれた香味野菜はソースにします。
バーベキュースペアリブの魂は、何と言ってもバーベキューソースです。かつて、海外で食べたスペアリブの味にはまり、英語のレシピ本を買っては、自分好みのソースを研究したほどです。そこには、ブラウンシュガー、醤油、コーラ、ウイスキー、あらゆるスパイスと、複雑で深みのある味を作り出すために、これでもかと材料を入れていました。
今できるバーベキューソースはそんな贅沢なものではありません。軟らかく煮込まれた、玉ねぎ、にんじん、セロリをフードプロセッサーでピューレ状にします。鍋に入れたら、おろしにんにくとショウガ、トマトピューレ、りんごジュース、赤ワインも入れて煮詰めていきます。
味見をすると、野菜やりんごの甘味、トマトやワインの酸味がしっかり出ています。後は足りない味を調味料で足してあげるだけです。岩内町の海水からできた星の塩、新ひだか町のハチミツ、幕別町の十勝ヒルズのいんげん豆の酢です。
下茹でして軟らかくなったスペアリブを、特製ソースに漬け込むこと半日。味が染み込んだところで、フライパンでこんがりと焼き目をつけて完成です。クリスマスディナーのハムを作るために、引っ張り出されて “出がらし” になったスペアリブと香味野菜がご馳走に変わりました。
素材の表面的な味を足し合わせて複雑な味を出そうとしていたかつてのバーベキューソース。今は、限られた素材を無駄にしないように味を引き出すことを考えるようになりました。それでも足りない味だけを、手元にある貴重な調味料で補ってあげるだけで十分なのです。
表面はカリッと焼き上がり、内側はトロっと柔らかいスペアリブに、甘酸っぱいソースがよく染み込んで一体になっています。食材について言えば、料理する人間の頑張り次第で、無駄になる物なんて無くなるはずです。
どこから来たのか全部わかっている最低限の食材だけでできた、複雑で深みがあるけど優しい味。これもご馳走の1つの形です。
バーベキューソース (350ml分)
※4の状態で味見をし、甘味と酸味がどのぐらい出ているかを確認してから、5の調味料を加減しつつ入れてください。あくまで素材の味があって、足りない分を補うイメージです。
バーベキュースペアリブ (3人分)