©100マイル地元食
EPISODE #222
【お料理】つまみ食いアスパラのバーニャ・カウダ
買って来たばかりの留寿都の新鮮なアスパラガス。食べるのを我慢できませんでした。出来上がったばかりの自家製アンチョビのソースと合わせて、地元の旬の味をつまみ食いします。
今回は、地元のアスパラガスと自家製アンチョビで作った、バーニャ・カウダのお話。
アスパラガスは鮮度が命です。時間が経つにつれて、穂先がゆるくなり、せっかくの水分が失われ、筋が固くなっていきます。1年間に及んだ100マイル地元食のチャレンジ最終日に食べるラストディナーまではまだ数日あります。
それまでなんとか美味しいままでいてくれ、と願ってはみるものの、今一番美味しいタイミングでも食べてみたくなりました。つまりはつまみ食いです。どうやってつまみ食いしようかな。見つけたのは冷蔵庫の片隅でじっと待っている自家製のアンチョビでした。
この2つの食材を組み合わせれば、とびきり美味しいバーニャ・カウダができるかもしれない。この聞いたことはあるけれど、詳しくはわからない代表のような料理は、イタリア語で熱々のソースという意味の北イタリアの郷土料理です。
まずは、バーニャ・カウダの魂とも言えるソースを作ります。余市町の新岡鮮魚店で箱買いした地元のマイワシと岩内町の星の塩で作ったアンチョビが、味の決め手です。
アンチョビ、ニンニク、米油と白ワイン、コクを出すための和寒町のペポナッツペースト、爽やかさをプラスする大葉を、滑らかになるまでミキサーにかけます。
キレイな緑色にするためにぷつぷつと泡が出るまで鍋で熱したら完成です。我が家のアンチョビは保存性を高めるために塩抜きしていない塩辛い本格派なので、これだけでも十分な味付けになるのです。
使う野菜は潔くアスパラだけにします。留寿都の「よしかわファーム」のグリーンアスパラガスと、同じ直売所で見つけたホワイトアスパラガスです。緑と白のコントラストがまぶしく光ります。
ピーラーで根元の固そうな部分だけ皮を剥いたら、アルミホイルで包んでガスコンロのグリルで蒸し焼きにします。アスパラの焼き加減は、仲が良い人同士でも好みが分かれるところです。
さっと焼いてフレッシュな歯応えを残したい人。ゆっくりじっくり焼いてトロける甘さを味わいたい人。私たち夫婦は運よく「さっと焼き派」でしたので、せっかくのアスパラで叩き合う喧嘩は避けることができました。
本場の北イタリアなら、食卓の上でもソースを火で温められる専用の器が必要ですが、ここは遠い北国の食卓。普通の器にソースを入れます。熱々のアスパラを気を付けて手で持ったら、ソースにディップして口に運びます。
アンチョビの海の香りが吹き抜けた後で、今度はアスパラが持つ清々しい高原の香りが広がります。熟成されたイワシの旨味は、アスパラの果汁の程よい甘みと渋みと一緒になって、複雑な味わいを生み出します。
さっとだけ火を通した穂先のサクサクホクホクした食感は、どこかジャガイモやお豆に近くて、初めて知ったアスパラの意外な美味しさです。これも新鮮なアスパラが買える地元の特権なのかもしれません。
今しか味わえない贅沢な一品、本番のディナーの前の幸せなつまみ食いです。いつか畑の中にテーブルを置いて、収穫したばかりのアスパラをアンチョビソースで食べてみたいな。しばし、そんな妄想を楽しむのでした。
アスパラとアンチョビのバーニャ・カウダ(4人分)