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EPISODE #206
【お料理】完成!100マイルラーメン!
なぜこんなにも手間と時間がかかる料理を、これまで何も考えずに食べていたんだろう。ラーメンを作るために3日間もキッチンに立ち続けながら、ずっと考えていました。誰かが作ってくれるラーメンは決して当たり前のものじゃありません。
今回は、100マイルラーメン作りの後編、素直に優しく出来上がりました。
ラーメン作りを始めて3日目の夕方、おぼろげですがゴールが見えてきました。初日から寝かせておいた “ルルロッソ” と「ニガリ」で打った生地を細く切って麺にします。パスタマシーンの2mmの幅でカットするので簡単です。
以前、小麦粉と玉子だけで打ったパスタをこの細さに切った時は、軟らか過ぎたのかブチブチと千切れてしまいました。でも今回の中華麺は違いました。しなやかですがしっかりしていた、引っ張っても切れません。美しい真っ直ぐな麺は、ぎゅっと握って私好みの縮れ麺にしました。
中華麺は、材料や打ち方、寝かせる時間、切る太さに縮れ具合、すべての要素を少しずつ変えれば、無限のバリエーションが生まれます。麺だけでもこれだけ奥深いのだから、ラーメンはラーメン屋さんの想いの塊と言えそうです。やっぱりすごい食べ物です。
冷蔵庫でゆっくりとタレの味を染み込ませておいたチャーシューは、素敵な色になっていました。私の好きなトロけるタイプのチャーシューにするために、寸胴鍋のスープの中で少しだけ温めておきます。
残ったチャーシューのタレはラーメンスープの味を決める、醤油ダレならぬ、“垂れ味噌” ダレに使います。醤油なのか、味噌なのか、どちらとも言えない不思議な味ですが、我が家らしい工夫あふれるメニューになりそうです。
ここからは手際の良さが必要です。大きな鍋でお湯を沸かし、切ったばかりの中華麺をほぐして入れたら、並べた丼に “垂れ味噌” ダレとスープ入れてよく混ぜます。麺が少し芯を残して茹で上がったら、ザルでお湯を切ってスープに入れます。
スライスしたチャーシューと茹でたチンゲン菜、刻んだ長ネギをのせたら、3日もかけた自家製ラーメンの出来上がりです。
3日目の夕食を楽しみにしていたのは私だけではありませんでした。家族もまた、この特別なご馳走を待ちわびていました。食卓に運ばれてくるラーメンをすぐに食べられるよう、先にイスに座っています。目の前に湯気が上がる丼が並ぶと、いただきますもそこそこに、すぐにかぶりつきます。
「おいしーよ、お父さん!」子供たちから声が上がります。こうしてはいられません。私もすぐに食べ始めました。
鶏ガラとモミジ、ニシンと昆布、香味野菜とリンゴでとったスープは、尖ったところが無くて、広がりがある旨味が優しく包みこんでくれるようです。微かに感じるニシンの干物の熟成された海の香り。控えめですが他にない個性になっています。
“ルルロッソ” の細ちぢれ麺は、なんとか麺の形を保ってくれました。少しコシが弱めなのに目をつぶれば、なかなかの出来です。チャーシューは狙い通りトロトロでジューシー。派手さはありませんが、素直な中華そばになりました。
あっさりとしていながら、食べるほどに引き込まれていく一杯。最後の一口を食べる終える頃にはすっかり虜になって、すぐもう一杯食べたくなります。家族全員のお代わりを作ると麺が無くなってしまいました。これで閉店です。
また食べたいと言われても、3日間もかかる料理はしばらく作れそうにありません。これだけの手間と時間をかけて作られるラーメンは、決してファストフードではありません。できるならラーメン屋さんで食べたいな。心からそう思います。
地元の食材だけを使って、生産者の想いやストーリーまで一杯のどんぶりに込めてくれるラーメン屋さんがあれば良いのに。もしいてくれたら、我が家の食生活は劇的に変わります。でも、こんな風変わりな客は我が家だけです。出会うまでは自分で作る、それしかないのでしょうか。