©100マイル地元食
EPISODE #105
【食材調達】ショウガは親と子じゃなく親と新
農家のお母さん達が開いた直売所で出会った、地元のショウガ。待ち焦がれた季節の食材ですが、気になる名前で売っています。“親生姜”?
育ちも個性も使い方も全く違うショウガたち。今回は、山盛りの2つのショウガのお話。
旭川のぬまんちさんの田んぼに新米を買いに行った帰り、もう一つ探していた食材がありました。自分から100マイルの範囲内で作られた食べ物だけで生きていくという、100マイル地元食の挑戦。6月に始めてからずっと手に入らなかった食材、それがショウガでした。
スーパーに行けば、札幌でも1年中ショウガが並んでいます。ですが、必ず高知産です。782マイル先のショウガは諦めて、地元産をずっと探していました。噂が聞こえてきたのは、10月頃。札幌がある石狩平野でもショウガが生産されている、らしい。
時期は10月中旬以降、地場スーパーではなく農産物直売所にしか並ばない、らしい。こんな都市伝説のような噂を信じて、暇さえあれば、いくつもの直売所を覗き込んでいました。この日、訪れたのは、札幌西側の岩見沢市にある北の大地マルシェでした。
北の大地マルシェは、農家のお母さん達が、自分たちで農産物を販売するために、一昨年オープンさせた直売所です。いろいろな意見を持った農家さんたちがまとまり、消費者に喜んでもらうという目標を掲げて、お店を開く。大変だっただろうなあと思いつつも、消費者としてはありがたい限りです。
野菜がだんだん減ってくる秋から冬にかけて、北海道の直売所では、野菜を大量に買い込むお客さんを見掛けます。それは、冬の期間に食べる漬け物を、自宅で作るためです。北の大地マルシェも例外ではなく、大根、白菜、カブが山盛りで売られていました。
そんな山盛りの野菜の先に、ありました。地元のショウガです。やっぱり作ってくれていました。大きなカゴに、1kgがネットに入って600円。量が多すぎてピンときませんが、たぶん安いはずです。ですが、気になることが1つ。“親生姜”と書かれています。
“親生姜”とは何なのか。うす茶色で見た目は普通のショウガですが、切られておらず大きな塊のままです。丸のままで、小さな子供サイズに切り分けてないから親なのかな?そう考えていると、近くの棚に、“新生姜”が売られています。これでいよいよ分からなくなりました。
“新生姜”は、スーパーで見かける物と同じく、皮が白っぽくて、葉が出ていた部分が赤くてきれいです。でも、これが“子生姜”と書かれていれば理解できたのに...。よくわからず迷ったら、両方買うのが今の私のマイルールです。もし、ここで買わなければ、次また出会える保証は無いからです。
1kgの“親生姜”を3つ、300gの“新生姜”を3つ。レジのお母さんの気になる視線にも、ニコッと返します。とりあえず、これだけ買えれば、しばらく料理に困りません。そして、念願だったジンジャーエールが作れます。諦めずに待ってて良かった。
帰ってから、いつものインターネットのお勉強で、“親生姜”の意味を確認しました。ショウガは、じゃがいもの種イモと同じように、種ショウガを植えます。種ショウガから芽が出て、地上に葉が広がり、陽光を浴びて蓄えた栄養で、新たに土の中にショウガを作ります。
ショウガがちょっと違うのは、最初に植えた種ショウガが萎まずに、植えた時の大きさのまま収穫できることです。そうです。これが“親生姜”の正体でした。さすがに固く辛くなるそうですが、価格はその分、安くなります。
“新生姜”は、その年に新たにできた部分。まだ柔らかい内に、甘酢漬けにしてガリにできます。“新生姜”を掘って数カ月寝かせると茶色い皮のいつものショウガになるそうです。このショウガたちが、個性を活かして適材適所の活躍をしてくれるはずです