©100マイル地元食
EPISODE #83
【お料理】ちょっとだけ背伸びした豚づくし料理
毎日のように料理を作っていると、なかなかどうして私の腕も上がってきたのでは?と思っていました。ですが、クリエイティビティ溢れる有名シェフのようには、新しい料理を生み出せません。
ルスツ買い出しで手に入った食材を使って、新しい料理に挑戦しよう!と意気込んではみたものの...今回は、料理は失敗を繰り返して上達するというお話。
札幌の我が家から100マイルの範囲は、たぶん日本で一番バラエティ豊かな食材が手に入る地域の一つです。米に小麦、豆。牛、豚、鶏、羊、合鴨、鹿のお肉。マグロや鮭に地魚。あらゆる野菜とキノコに、リンゴやブドウ。それに、塩、砂糖に酢。お酒もあります。
そして、季節はほぼ全ての食材が手に入る実りの秋。日本中、いや世界中を見回しても、これだけ100マイルチャレンジに適した土地は見当たりません。料理の腕も上がってきたし、食材もたっぷりあるんだから、もっと難しいことにチャレンジしてみよう。
思い上がった私が挑戦したのは、できるだけ1つの地域で採れた食材だけで料理をしてみること。前日に買い出しに行っていた留寿都村の食材で夕飯を作ることにしました。ルスツ豚と留寿都の野菜で和食を作ります。
まずは、ルスツ豚で豚汁を作ります。豚バラ肉を薄く切り、弱火でじっくり炒め、旨味たっぷりの脂を出していきます。そこにルスツの道の駅で買った、大根、白菜、人参、長ネギを切って入れ、脂を絡めるように炒めまたら。たっぷりの水を入れて煮込みます。
ルスツ産ではありませんが、昆布と酒を入れます。最後にルスツのよしかわファームさんの大豆で作った自家製味噌を入れ、豚汁の完成です。だけど、もう少し何か足せないかな。欲が出ました。家にある食材の中から選んだのは、同じく吉川さんの長いもでした。
長いもですいとんを作って入れたら美味しいんじゃないか?すりおろした長いもと蘭越町の米粉をこねた生地をちぎって丸めて、投入しました。これは間違いなく美味しくなる。成功を確信した私は、食べるのが楽しみでした。
次にメインの豚丼を作ります。北海道名物の豚丼と言えば、醤油ベースの甘辛いタレで絡め焼きした黒い豚肉がたっぷりの丼です。ですが、我が家の醤油はまだ仕込んだばかりで、完成するのは来年です。ここでも自家製味噌に頼ることになります。
味噌と砂糖を酒で溶いたものを、ルスツ豚のロースにかけて揉みこんでおきます。油をひいたフライパンで、さっと焼いたら、熱々のごはんに山盛りのせます。ルスツで買ったししとうも焼いて塩をして、ついでにのせます。
ルスツ豚丼とすいとん豚汁が出来上がりました。自分の料理の腕を信じて、調子に乗って作った創作料理。自信満々で食卓に並べました。
まずは、豚汁から食べます。豚の脂の旨味とルスツ野菜の甘味がしっかり引き出されて、自家製味噌の優しい風味が包み込んでいます。味はとっても美味しい。ですが、あれ?汁がドロドロです。たっぷり入れたすいとんの米粉が溶け出して、トロみがついたのか、ポタージュのようなドロドロです。
次に豚丼です。ルスツ豚は赤身も脂身もどっちも旨い。噛むほどにジュワっと旨味が広がります。だけど、知ってる醤油味の豚丼とは全く違います。美味しいことは美味しいんだけど、違う食べ物でした。醤油の甘辛味に代わる味を編み出すのは、そう簡単なことではありません。
せっかくの美味しい豚肉と野菜。調子に乗って創作料理にしたことで、ちょっとだけ残念な結果になってしまいました。その地域に有る物にこだわって、無い物は代わりを探して料理する。素人に毛が生えたぐらいの私の料理の腕では、まだまだ難しい事です。
謙虚に食材に向き合って、美味しさを引き出すこと。自分のクリエイティビティを全面に出し過ぎてはいけないのです。
すいとん豚汁 (4人分)
※最初からすいとん汁にしようと考えていれば、すいとんを入れてから、最後に味噌を入れた方が、味噌の風味が活きて美味しいと思います。
味噌豚丼 (4人分)