地鶏という響きは肉好きをワクワクさせてくれます。どんな人が育てたのか、そこまで知った地鶏なら、絶対に食べたくなります。“新得地鶏” を育てていたのは全く関係ない会社の社長さんでした。

今回は、人の想いに共感して買いに行った地鶏のお話です。

武田さんが育てた “新得地鶏”

道外の方にはあまり知られてはいませんが、北海道にも地鶏を育てている土地があります。その一つが十勝エリアの西の端、新得町(しんとくちょう)です。“新得地鶏” と名付けられた貴重な鶏を、町の名産品にしようと地元の方たちが頑張っています。

札幌で行われたある講演会で講師としてお話されていた十勝・新得フレッシュ地鶏事業協同組合」の代表理事、武田さん。新得で生まれ、新得で育った武田さんは、大学生の頃、同級生が新得町を知らなかったことにショックを受けて、いつか「新得」の知名度を高める仕事がしたいと思っていたそうです。

ある日、地鶏の飼育の話を持ち掛けられ、これだと感じて “新得地鶏” を育てようと決心されたそうです。生産されている食べ物よりも先に、生産者の考えに共感することもあります。こんな面白い人が育てている地鶏なんだから、美味しいに決まってる。そう思いました。

地鶏は厳しい条件を満たした特別な鶏

それにしても、地鶏とはどんな鶏なんでしょうか。武田さんによれば、「地鶏」と名乗るためには、品種と育て方の両方で条件を満たす必要があります。品種は、明治時代までに日本に導入された在来種の血統が50%以上入っていること。育て方は、80日以上かけてゆっくり、そして28日齢以降は床面で平飼いで育てること。

鶏の平飼い
鶏の平飼い(イメージ)

“新得地鶏” は、北海道立総合研究機構が開発した100%在来種血統の品種「北海地鶏Ⅱ」を、東大雪のマイナスイオン水を飲ませ、新得名産のそばを食べさせ、そば殻の上で120日もかけて育てた、正真正銘の新得町で育った地鶏なのです。

一般的に、スーパーで買えるリーズナブルな鶏肉は、ブロイラーと言って、40~50日間で急速に成長させた鶏肉です。安くて柔らかいブロイラーは消費者にとっては助かりますが、生育期間が3倍近い地鶏とは違う食べ物だと考えた方が良さそうです。

教習所育ちの “新得地鶏”

札幌からは77マイル先、襟裳岬から北に伸びる日高山脈を越え、十勝平野が始まる場所に新得町があります。面積が東京都の半分もある広大な町です。国道38号線を走っていると見えくるのが、「新得モータースクール」の看板です。“新得地鶏” はここにいます。

新得モータースクール
新得モータースクール

武田さんは、株式会社新得モータースクールの社長さんでもあるのです。2008年に教習所の敷地にビニールハウスと囲いを建てて始まった地鶏の育成、今では年間4万羽もの “新得地鶏” を育てています。武田さん達の想いが詰まった教習所育ちの地鶏を買って帰ることにします。

新得モータースクールの養鶏場
奥の山の麓で飼われています

新得町で “新得地鶏” が買えるお肉屋さんが1軒あると聞きました。JR根室本線の新得駅の東側にある「上田精肉店」です。外から見ると普通の町のお肉屋さんの雰囲気。そっと中に入って見ると、ショーケースには新得地鶏が並んでいませんでした。あれ、おかしいな。

鶏肉を通して受け止める町への想い
上田精肉店
新得町の上田精肉店

「すみません。新得地鶏ありませんか?」

大きな牛肉の塊を切り分けていたお店の方に声をかけました。

「新得地鶏ですね。はいはい、ちょっと待っててね。」

ニコッと笑って、奥の部屋から箱を2つ持って来てくれました。もも、胸、手羽、ササミが入った半身パックと、もも2枚、胸2枚の1羽分のセットでした。武田さんのお話に共感し、新得町まで来て、教習所を外から覗いて、ついに “新得地鶏” と対面することができました。

比べるのも申し訳ないけど普通のブロイラーに比べれば、しっかりした値段がします。ですが、絶対に食べたいと思ってここまで来た地鶏です。2箱とも買うことにしました。

新得地鶏
赤身の色が濃い新得地鶏

「自分が生まれ育った町の魅力をもっと知ってもらいたい。」

土地を愛しているからこそ生まれる自然な想いですが、なかなか行動に移せる人はいません。こんな気持ちで鶏と向き合っているのでだから、出来上がった鶏肉は、正直な味がするはずです。どうやって食べようか、私もしっかり向き合ってみることにしました。