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EPISODE #45
【妻の回×十勝旅行】密かに始まる2つの裏計画
妻にとっての家族旅行、それは今まで、家事を少し休憩できるチャンスでした。でも、今回の家族旅行は少し様子が違います。
100マイル地元食ルールを守りながら行く初めての旅行です。それは、最近やっと落ち着き始めた日常の生活よりも、もっともっと大変な思いをする旅行でした。
今回は、妻の目から見た、十勝旅行初日です。
これまでは、まず旅行の行き先を決めてから、宿を選んでいました。仕事が忙しかった旦那に代わって、私がお手軽なビジネスホテルかキャンプ場を探していました。今回の十勝旅行で、旦那と相談して決めた宿の条件はこんな感じ。
この条件で探すと、ほとんど選択肢がありません。キッチンが良くても、お風呂がない。トイレは付いていても、お風呂は近くの温泉か、管理棟のシャワー。そんなのがほとんどでした。
長男がもっと小さい頃、我が家は何も知らずに、家族で温泉に行き、長男も一緒に温泉に入れていました。しかし、後で知ったのですが、赤ちゃんはまだ肌が弱いので、1歳くらいまで温泉は刺激が強すぎるかも。そして、大浴場ではおしっこをして周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。
おしっこの件は、考えれば当然のことでしたが、その時は何も考えずに、温泉好きの私たち夫婦に付き合わせていました。肌の強い子で良かったと後からホッとした記憶があります。
こんな妥協できない条件ばかりのなか、唯一私たち家族の希望を満たしてくれたのが、
中札内の農村休暇村フェーリエンドルフでした。これ以上の所はないと思い、私は、珍しく第二候補も探さずにフェーリエンドルフだけを旦那に伝え、予約をしてもらいました。
宿も決まり、旅行の準備を始めると旦那は次々に調理器具を詰め込み始めます。いくら、ルーフキャリアを新しくつけたと言っても、そんなに入るのかな。不安に思いながらも、こんな時は黙っているのが一番です。
旦那はピリピリし始めると無口になります。そして、この時はまさに無口でした。邪魔をしないように、私の分担の荷造りを終え、ようやく出発します。車中では、今晩の夜ご飯をどうするか、会議が始まりました。
これまでの旅行なら、初日の夜は道中のレストランに入って、その土地の名物を食べるのが最初の楽しみでした。十勝なら、旦那は迷わず豚丼屋さんに飛び込んでいたことでしょう。
※以前の旅行での当たり前の風景です
しかし今晩は、自分で炊いたご飯と、ただ焼いた肉だけで済ませよう、という事になりました。いつもに比べると、なんとも寂しい夕飯です。旅行なら、いつもと違って豪華で美味しいご飯が食べられるのに。旦那のイライラが増していくのが手に取るように分かります。
さらに追い打ちをかけるように、必需品のお米は、十勝では生産していないようで、途中、脇道に逸れて富良野で買うことになりました。運転距離が伸びるほど、旦那の疲れに比例して、イライラレベルが上がっていくばかりです。
そして、とどめになったのは、またあれ、塩です。思えば、100マイル地元食はこれまでずっと塩との戦いでした。バターを買いたくても、100マイル圏内の生乳と、どこのものかわからない塩。チーズも同じ。醤油も味噌も、大豆は地元産だけど、塩は遠くから来ています。
なぜ、ほとんどの加工食品に使われるのに、どこから来たのか分からない塩ばかり使われているのか。今まで、全く気にしたことがなかったことです。でも今は、ことごとく塩がネックになって、加工食品が買えないことに、ちょっと腹が立っています。
特に私も子供もチーズが大好物なので、チーズを買えない現状は、なかなか辛いです。子供たちにピザが食べたいと言われても、チーズ無しのピザなんて子供たちが認めてくれるはずもありません。最近では、どうにかどこかのチーズ屋さんと仲良くなって特別に作って貰えないものかと考え始めてます。
どんなに調べても、宿から100マイル以内の塩は無さそうでした。仕方なく、ここは例外ルールとして自分たちを納得させ、持ってきた星の塩を使うことになりました。
でも実は、今回の旅行では、塩だけではなく、例外ルールの保険として子供たちの大好物、リンゴジュースも持ってきていました。万が一、幸運にも十勝の塩が見つかれば、例外ルールの繰り上げ当選でリンゴジュースを飲ませることができます。
そんなわずかな期待は見事に裏切られ、荷物に隠したままのリンゴジュース。鋭い長男が気付かないはずがありませんでした。これは飲めないんだよ。子供に理由が理解できるわけがありませんでした。
外も暗くなり、天気も雨。リンゴジュースが飲めない気晴らしの映画を夢中で観ている子供たち、対照的に、大人たちのテンションは下がる一方です。
初日の唯一の救いは、中札内の道の駅で買った、カゴいっぱいの小粒のイチゴたちでした。決して綺麗とは言えない素朴なイチゴたちが、とてもみずみずしくて甘い。その日、ぐったり疲れきった私たちを癒してくれました。
この旅行、果たして笑顔で帰ってこれるのか。食材だけを求めて旅行が終わってしまたら子供たちは怒るかな。そんな不安を抱えながら、長距離ドライブで疲れた旦那と子供たちを寝かしつけ、1人で黙々と食器を洗い始めました。
私は洗い物をしながら、密かに2つの計画を立てていました。1つはモール温泉に入ること。温泉好きとしては一度は入ってみたかった温泉です。以前、旅行で十勝に立ち寄ったときは断念していました。今回こそは入りたいと密かに願っていました。
そして2つ目は、ドリカムのファンである私が、一度は行ってみたかった聖地に行くこと。調べてみると、その町はワインと牛肉が有名らしく、ここはドリカムのことを伏せて、ワインとお肉で旦那の興味をひくしかない。
意気消沈している今なら、旦那は簡単にのってくれるかもしれない。1人ニヤニヤしながら洗い物を済ませ、抱っこ紐の中で熟睡している次男を抱えベットに向かいました。
どこの町に行きたいか、ドリカムファンの方なら分かりますよね。