©100マイル地元食
EPISODE #208
【キャンピングカー旅】生産者さんに会ったら何を伝える?
100マイル地元食ルールでの最後の旅行。遅めの春を迎えた北海道の大地にキャンピングカーが走り出しました。会いに行きたかった農家さん、どうしても食べたかった食材、出会いと感謝にあふれた数日間の旅行の始まりです。
今回は、キャンピングカー旅編の第2話、珍しく順調な旅の始まりのお話です。
100マイル地元食のルールは食を楽しみたい旅人に都合良くできています。自分を中心に半径100マイル(160.9km)の円を書いて、その中で作られた食べ物だけを食べるライフスタイル。つまり、自分が移動すれば、一緒に付いてきた100マイル円の中でまた地元の物が食べられるのです。
これまでには、夏の十勝、冬の沖縄と2回の旅行に挑戦してきました。この修行のように過酷で、人生を変えてしまうほどに感動する旅。100マイル地元食の挑戦は残り1か月。おそらく最後の旅行になる今回は、思いきってキャンピングカーで北海道内を走り回ることにしました。
思えば、この生活を始めてから、多くの農家さんや漁師さん、猟師さんに職人さん、お店屋さんに出会いました。友人が増える度に我が家の食卓が豊かになる。我が家の風変わりな挑戦は、地元の生産者さんという友人たちと一緒に歩んできた記録でもありました。
そんな友人たちに会いに行く旅行がしたい。妻との話し合いでいつの間にか、旅の目的は決まっていました。
北海道では、キャンピングカー旅行の人気が高まっています。関東地方の2.6倍もある広大な土地を巡ろうとすれば、自然と移動時間が長くなります。移動時間さえも特別な体験にしてしまうキャンピングカーが大人気なのも納得です。
特に海外からの旅行者に人気で、新千歳空港の周辺のレンタカー屋さんで借りることができます。今回借りたのは、6人乗りで、大人2人と子供3人がゆったりと足を伸ばして眠れる広いタイプです。でも、車体はバンや2tトラックと同じぐらいのサイズなので、慣れれば運転は難しくありません。
そして何より、車内にガスコンロと冷蔵庫が付いているのが、100マイル地元食旅行にぴったりです。つまり、小さな走るキッチンなのです。札幌の我が家に見慣れない大きな車が戻ると、お鍋とフライパン、包丁にお米と、およそ旅行に行くとは思えない道具たちを積み込み始めました。
その日の午後、小学校から全速力で走って帰ってきた長男(6)を忘れずに詰め込んだら、最初で最後の100マイルキャンピングカー旅行に出発です。
興奮する家族を乗せて、まだ混雑していないゴールデンウィーク前日の街に走り出しました。初日の目的地は、我が家から北東に78マイル(125km)先の東川町にある「キトウシ森林公園家族旅行村」です。
背が高いキャンピングカーは横風を受けて揺れます。慣れるまでのしばらくの間は、緊張しながらの運転が続きます。それでも、後部の居住空間は別世界。備え付けのTVを見ながら、優雅におやつタイムを楽しんでいます。
どうにか日暮れ前に着いた旅行村のオートキャンプ場。いつもの100マイル地元食旅行なら、この時間から夕飯の食材調達に出かけるのが恒例でした。妻と私が「試練の初日」と名付けた初日の夕飯です。でも、今回は冷蔵庫付キャンピングカーの快適な旅行です。
例外ルールの「長距離旅行ルール:持参した調理済み食べ物は範囲外でも食べられる」を使って、家からご飯やおかずを持って来ていました。さっと夕飯を済ませた初日の夜。キャンピングカー旅行は、思っていた以上に快適です。
明日の朝からは、生産者さんを訪ねて回ります。生産者さんに会う時はいつもドキドキ。都会にいながら、いつでも世界中の食べ物が買える便利な現代社会では、生産者さんと消費者が直接会うことはほとんどありません。
だからこそ、どちらもこの素晴らしいけれど、少しだけ気恥ずかしい体験に慣れていないのです。すぐそばにいながら長く長く続くバトンリレーの始まりと終わり。互いを必要としているのに会うことがない、悲しい両想いです。
生産者さんに会えたら何を伝えたいでしょうか。
「いつも我が家の食べ物を作ってくれてありがとう。」
「何か美味しい食べ物ありませんか?」
「初めまして、友達になってください。」
我が家が気が付いてしまった、消費者から生産者に会いに行く楽しみ。そんな少し変わった目的の旅が始まったのでした。