©100マイル地元食
EPISODE #71
【保存食】諦めの100マイル醤油仕込み
我が家では料理を作る時、レシピ本やレシピサイトを参考にしています。そんな時、ある言葉を目にすると、はあ、とため息が出ます。またか...
それは、醤油です。和食はもちろんですが、中華料理、アジア料理も、時には洋食でさえ醤油を使っています。日本人はほんとに醤油に頼った食生活をしています。
今回は、手作り醤油の一大プロジェクトと地元塩の話。
醤油作りには、とても長い時間がかかります。専門書のレシピを参考にすると、最低9カ月、美味しく作るには2年間も発酵熟成しなくてはいけません。我が家の100マイル地元食は1年間の挑戦です。残すは8カ月ちょっと。間に合いません。
そうは言っても、日本人は醤油が無い食生活に長く耐えられません。刺身は塩、北海道のご当地唐揚げのザンギも塩味、娘(3)に不評のうどんは味噌味。今後、チャレンジしたいラーメンも味噌か塩味だけ。横浜で育った私は、醤油とんこつ味じゃなきゃダメなんです。
いくら探しても、100マイル内の原料だけで作られた醤油は見つかりませんでした。もう、我慢の限界です。間に合うかどうか分かりませんが、一か八か醤油作りにチャレンジすることにしました。
でも、間に合う算段も無しには始められません。強い味方になるのが、我が家のヨーグルトメーカーです。タイマーをセットすると、一定の温度を保って発酵食品が作れる調理家電です。浅い漬かりの白味噌なら一晩でできてしまう優れものです。
そして、醤油は塩水を入れて仕込むだけで、基本的な作り方は味噌と同じです。初期の発酵をヨーグルトメーカーで促進すれば、全体の発酵期間を短縮できるかもしれないと考えたのです。こうして、一発勝負でやり直しが効かない挑戦が始まりました。
本来なら麦麹を使うようですが、手に入るのは米糀だけ。一晩水につけてふやかした留寿都のよしかわファームさんの大豆を、圧力鍋で茹で、潰して、札幌の糀ファクトリーさんの玄米糀と塩と混ぜます。ヨーグルトメーカーに入れて、60℃で20時間発酵させます。できあがるのはいつもの味噌です。
そこに塩水を入れて、大きなガラスの保存容器に入れて、たまに振るだけで、後は待つだけ。いったい何カ月で完成するのやら。
調味料が買えないのはいつものこと。最大の原因は塩です。100マイル範囲内の塩を使った醤油、味噌、ドレッシングは1つもありません。もう諦めてはいるものの、やっぱり納得いきません。何か月か後に醤油になるはずの味噌と塩水を眺めながら、考えていました。
根気よく探す気があれば、ネット上にはどんな問いの答えも載っています。日本では、戦前戦中には塩の自給が必要となり、戦後は国策として製塩技術開発を行ってきました。そして、1970年代に登場したのがイオン交換膜製塩法。大きな製塩工場で工業的に生産する方法です。
この時代から、国に育てられた大手製塩会社は、瀬戸内や北九州に限られてしまいました。だから、北海道には大きな製塩工場が無いのです。今、我が家が買っている岩内町の星の塩や、洞爺湖町のカムイ・ミンタルの塩は、2002年に塩の製造販売が自由化された後の自然塩ブームで生まれた、手作りの海水塩です。
イオン交換膜製塩法で作られる食塩は、100gで60円。手作りの海水塩は100g300円以上。5倍も価格差があったら、粋な大人や、かなりのグルメ、それか、よほど変なルールで縛られている家族ぐらいしか買わないでしょう。
今から、北海道にイオン交換膜製塩法の工場を誘致しよう!と役所の前で叫んでも、おいおい、いきなりどうした、このおじさん!?と、若者に避けて通られるのは明らかです。
ですが、我が家がある札幌の消費者が、地元の塩の美味しさを知って、とっておきの日の料理にだけ使うようになったら?少しの変化ですが、地元塩が多く作らるようになるし、値段が下がるかもしれません。
You are what you ate. (あなたは、あなたが食べてきたものでできている。)好きな言葉です。計算すると、私の身体には400gぐらいの塩が入っているそうです。私の中の塩が、全て100マイル内の海から来たものだとしたら?
保存瓶の濁った塩水を見つめながら、北の海を泳ぐ魚になった気分になるのでした。
※塩分濃度を味噌と同じ12%にしていますが、15%以上にするレシピが一般的なようです。
※ヨーグルトメーカーを使ったレシピが見つからず、何カ月で醤油になるかまったくわかりません。経過を見ながら、レシピは修正していきます。
コメント
楽しみですね
少なくとも半年後なんで、忘れたころに出来上がると思います。