©100マイル地元食
EPISODE #156
【食材調達】買えた!全部地元の100マイル味噌
ずっと前に買ったんだけど、その凄さに気が付いていなかった食べ物の話。それはすべて地元産の原料のお味噌でした。地元産のしょっぱい加工品が無い理由はわかっています。だって地元の塩が圧倒的に少ないから。
今回は、オール地元産原料の味噌から新しいストーリーが始まったお話。
それは、昨年10月、友人に薦められて参加した「ごはん展」というイベントでのことでした。ごはんと、ごはんに合うおかずがテーマの面白いイベントでしたが、第一回にも関わらず、多くの人でごった返していました。人混みの先にあった小さな出店で見つけたのです。
服部醸造の “オール八雲味噌” です。八雲とは八雲町(やくもちょう)のことで、北海道の南西にある先端に函館がある渡島半島の真ん中ぐらいにある町です。オール八雲という言葉の通り、米、大豆、塩の原料の全てが八雲町産で作られた味噌でした。八雲は札幌から76マイル(122.8km)の町です。
初めは静かに、次第にその意味が実感できてきました。それはずっと探し求めていた100マイル内の買える味噌だったのです。もはや諦めていた塩以外のしょっぱい調味料。こんなにも偶然に、そして突然に出会ってしまったのです。
地元のしょっぱい調味料や保存食がほぼ存在しない理由は、やはり塩の問題です。味噌や醤油には大量の塩が使われます。塩分濃度をみると、味噌が12%ぐらい、醤油も15%以上あります。保存食では、15%以上の塩分濃度にしないと腐敗を防げないのです。
ここ北海道の札幌から100マイル範囲内にある海水塩はだいたい4円/gです。仮に塩分濃度12%の味噌1kgを、地元の海水塩で作ったとしたら、材料費が塩だけで480円になってしまいます。普通の味噌の価格が1kgで1,000円と考えれば、あまりにも高い塩です。
だから、北海道では味噌も醤油も、チーズも新巻鮭でさえも地元の塩を使っていないのです。西日本の工場で大量生産されている塩や、暑く乾燥したオーストラリアで作られる天日塩は0.4円/gぐらいで、価格差は10倍です。こちらが使われるのは当然です。
それに、100マイル内でお塩を作っているのは、皆さん小規模経営の方達です。手作業で作られる地元の塩は、加工品で使われる需要に対して圧倒的に量が少ないのです。
服部醸造の “オール八雲味噌” は、なぜ地元の塩が使えるのでしょうか。この日、「ごはん展」で売っていたのは200g入り500円の箱。味噌としてはなかなかの高級品ですが、地元の手作り塩を贅沢に使えるほどには高くありません。
「八雲町産塩(海洋深層水使用)」
ヒントは、値札に小さく書いてありました。塩ではなく、海水を使って仕込んである味噌だったのです。帰りがけにスマホで調べてみると、八雲では産業振興のために、町が海洋深層水を汲み上げて格安で販売していました。町内の業者なら1トンで300円です。
1トンの海水に30kgの塩が含まれていると考えば、信じられないほどの安さです。塩はやっぱり、乾かして結晶にするのにコストがかかるのです。服部醸造では、安く大量に手に入る海洋深層水をうまく活用して、すべて地元産原料の味噌を実現させていたのでした。
でも、「ごはん展」にいる時は、この味噌の凄さがわかっていませんでした。こういったイベントでしか販売していないと言われたのに、買ったのは2箱で400gだけでした。後で落ち着いて考えてみたら、味噌汁を3回も作れば無くなってしまう量です。
「いつか特別な日に使おう。」
その結果、この革命的な100マイル味噌は冷蔵庫の片隅で、ずっと日の目を見ることはありませんでした。それから数カ月が経ち、そろそろ使おうと考えた時、普段は本当に買えないのか改めて調べてみることにしました。そうしたらあっけなく見つかったのです。
ネット通販で、3kg桶が5,400円(税、送料込み)。200gになおしたら360円だからぐっとお得です。すぐに購入しました。我が家で仕込んでいた自家製味噌があまりうまくできず、思い悩んでいた中で、やっと買うことができた100マイル範囲内の味噌。作りたい料理は山ほどありました。届く前から楽しみで仕方ありません。