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山の向こうの天然酵母ワイン

EPISODE #38

山の向こうの天然酵母ワイン

2017.7.28

食材調達,シーズン1

 生産者さんとの出会いを重ね、100マイル内の食材が買えるようになってくると、自然と料理の腕も上がってきた気がします。

 そうなると欲しくなるのが美味しいお酒。日本酒はすでにあるから、次はワインです。パワフルな友人たちのお力を借り、巡り合うことができました。

 今回は、天然酵母ワインのお話。

ひと山越えるとそこは藤野ワイナリー

 北海道は、知られざるワインの宝庫です。明治9年(1876年)に札幌葡萄酒製造所が建てられて以降、函館、小樽、十勝など、北海道各地でワインが作られています。どのワイナリーのワインを飲むか、ずっと探していました。

 札幌の我が家の近くに、酒舗七蔵という酒屋さんがあります。1階は日本酒がずらり、2階は空調が効いた部屋にワインが並んでいます。その中で、札幌市内のワイナリーのコーナーがありました。藤野ワイナリー、これもある意味、運命的な出会いです。

 藤野ワイナリーの場所を調べるとびっくりしました。車で30分、南の山を越えたところにあったのです。札幌の西側は夜景で有名な藻岩山など、山々が連なっています。その間、定山渓温泉に通じる谷間に藤野ワイナリーはありました。

藤野ワイナリー見学ツアー

 この日は、藤野ワイナリーを見学に行きました。案内してくれたのは友人の蝦名さん。そして、蝦名さんのまたご友人、谷口さんと井上さんも来てくれました。我が家からは、私と息子(6)と娘(3)が参加です。

 藤野ワイナリーへの坂道は、両側に野菜畑が広がっています。のどかな雰囲気に、気分が盛り上がります。森の中のワイナリーの前で待ち合わせします。蝦名さんと私以外は、初めて顔を合わせるメンバー、無邪気な子供たちが間をとりもってくれました。

 ワイナリーのドアを開けて2階に上がると、試飲ができる販売スペースです。室内の窓から、1階の醸造所が見渡せます。天然酵母だけで仕込む手作りのワインたちです。壁の黒板には、原料のブドウがどこから来るか書かれています。よし、すべて100マイル内です。

 井上さんと私はドライバーですので、蝦名さんと谷口さんが赤、ロゼ、白、スパークリングの4種類のワインを試飲して、味を教えてくれます。言葉から味を想像して、どれを買って帰るか考えます。うん、ぜんぜんわからない...

亜硫酸塩をどう考えるか?

 藤野ワイナリーを選んだ理由がもう1つありました。ワインには必ずと言っていいほど入っている酸化防止剤の亜硫酸塩の存在です。藤野ワイナリーは、亜硫酸塩を使わないか、極力減らそうとしている数少ないワイナリーです。

 私は、食品添加物について、そこまで気にしていません。ですから、100マイル地元食を始める前は、亜硫酸塩の存在すら気付いていませんでした。ですが今は、産地がわからない亜硫酸塩を避けなければいけません。この日、試飲できた4種類のワインのうち、亜硫酸塩が入っていないのは1種類、スパークリングだけでした。

 ワイナリーの方に、亜硫酸塩を入れる理由を聞いてみました。亜硫酸塩は、酵母菌の働きを止め、それ以上、ワインの味が変化するのを防ぎます。甘口のワインは、亜硫酸塩で発酵を止めないと、糖分が無くなり辛口になってしまう。ネットで調べてみると、亜硫酸塩は、古代ローマ時代からワイン造りに使われていたそうです。

 これは悩みます。ワインは歴史上、亜硫酸塩とセットで発展してきたとも言えます。なので、それを100マイルルールで四角四面に除外してしまえば、飲めるワインはほぼ無くなってしまいます。都合が良すぎるかもしれませんが、また例外ルールを作らないといけないのでしょうか。

初めてのルール保留で買った3本のワイン

 正直言うと、この日、亜硫酸塩について、例外ルールにするかどうか、決断することができませんでした。北海道だけでなく、今や日本各地で、地元のブドウや果物を使ったワインが作られ、地域を盛り上げようとしています。そんな多くのチャレンジが目指すところは、私が想い描く夢と同じ、生産者と消費者がもっと近づいた地域社会です。

 だから、地元のワインを飲めるルールにしたい。応援したい。頭の中は静かにぐちゃぐちゃになっていました。しょうがない、今日は買って飲もう。そしてまた考えよう。初めて、100マイルルールでグレーな、赤、白、ロゼの3本のワインを購入しました。

 この日は、そのまま全員で我が家に戻ります。こちらも初めて、お客さまを招待した我が家での100マイルディナーのためです。まずは、こだわって造られた藤野ワイナリーのワイン達に負けないような料理を作ろう。そう前向きに考えていました。

コメント

  1. taniyumi より:

    なるほど・・・普段、何気なく買っているもの、味わってる食・・・選んで買っているつもりでも、その背景を知らないと言う事に「はっ」としました。
    いつから、こんなに「便利」で「考えない」消費者になってしまったんだろう。。。
    でも、そんな自分に気づけました!ありがとうございます。これからも楽しみに拝読します♩

    • 鈴木 俊介 より:

      コメントありがとうございます。

      消費者にとって、食べるのは生きるためです。生きられれば良いと思えば、こんな便利な国、最高です。

      ですけど、おっしゃる通り、考えることまで任せてしまうと、背景が伝わってこないので、楽しくありません。

      せっかく近くに産地があるんだからもったいないですよね。

      今ある食の選択肢を少しだけ横に置いておいて、産地に行ってみるだけで新しい世界が広がります。

      ぜひぜひ真似してみてください。

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