©100マイル地元食
EPISODE #13
神恵内のカキ母ちゃん
北海道-道央エリア
6月
漁師さんとの出会い
寿都漁港での大串さんとの偶然の出会いの興奮も冷めやらず、私と青木君は、進路を東にとります。水産ウィークのこの日の目的がもう一つ。岩内の星の塩の生産者を探すことと、神恵内(かもえない)の貝を買うこと。
岩内の星の塩は、我が家が買うことができた、初めての100マイル内で生産された塩でした。我が家が勝手に無茶な食生活を始めた結果、星の塩に助けられたという話を、どうしても生産者の方に伝えたかった。
日本海の海岸線と、切り立った高い崖がいつまでも続きます。これから訪れる素敵な出会いに期待しつつ、車を走らせます。
岩内町は、かつて新潟の直江津港とのフェリーが行き来していた大きな港がある町です。近年、人口が減少する大変な状況の中、地域の産業を盛り上げる目的で、2003年から海洋深層水の汲み上げを行っています。岩内町沖の水深300mに取水口を取り付け、汲み上げた清浄な海洋深層水で特産品を開発しています。
その1つが星の塩らしい。ここまではわかっていました。ですが、私は道の駅でしかこの商品を買っておらず、作っている方にお会いしたことがありません。100マイル地元食では、できるだけ作っている方から直接購入し、その想いに共感して食べるようにしたい。そんな思いから、星の塩を生産されている、金澤鮮魚店を探します。
星の塩のパッケージに書かれている住所をナビに入力して探しますが、見つかりません。通り過ぎたかなと、何度も周囲を回りますが、それでも見つかりません。金澤鮮魚店の店主金澤さんは、漁師さんらしく、この日はまだ漁に出られていたのでしょうか。結局、お会いすることはできませんでした。
がっくりと気落ちしたまま、次の目的地、神恵内を目指します。お目当ては、神恵内で獲れた貝類だけを販売する三浦漁業部です。かつて、星の塩を見つけた海岸キャンプの際に立ち寄ったお店です。さて、今日は何があるか。
外からのぞくと、閉じたドア、暗い店内。もしかしてお休みですか?
午前中の寿都漁港での買い物が素晴らしかっただけに、岩内の星の塩、そして神恵内の三浦漁業部、この2つの空振りのショックは大きい。狙い通り買えるだけではつまらないだろう、そんな負け惜しみを言って車に戻ろうとした時、お店の脇から声が聞こえました。
「店は土日しかやってないよ。なあに、買いたいの?」
お店の脇で、お店で使う桶を洗っているお母さん達がいました。その中の、三浦漁業部のお母さんが声をかけてくれたのです。私が、落胆した気持ちを隠せずに言います。
「はい。前にも来たことがあって、今日は札幌から来たんですが...」
「それなら、ちょっと行ったとこにカキがあるから、持ってくかい?」
お母さんの天使のような声。こんな展開になるとは思ってもいませんでした。
車で先導してもらって訪れたのは、古宇郡(ふるうぐん)漁協の施設。建物の中には、大きな水槽が並んでいます。その一つからカキがたっぷりと入ったカゴを引き上げてくれました。丸々と太ったカキが1個100円、信じられない価格です。
青木君のちょっと待ての言葉も聞かず、12個も買います。定休日にここまで連れてきもらって2~3個とは言えないでしょう、青木君。
神恵内では、ぜひとも青木君に見て欲しい場所がもう1つありました。道の駅オスコイ!かもえないです。道の駅としては、決して大きなところではありません。お土産売り場にソフトクリーム、トイレがあってと普通の道の駅です。
ただし、普通じゃないのは、真ん中にホタテが入った水槽があって、いつでも生きているホタテが買えることです。しかも値段は、1個150円。最近は獲れにくくなってて、値上げしたそうです。
水槽から取り上げる網があるのに、青木君は男気を出して、素手でホタテを取り始めました。ぷっくりと肉厚で、美味しそうなホタテを選びます。お願いした10個を選び終わった時には、冷たい水温に悶絶していました。低い水温でしか生きられない、これぞ北海道でホタテ養殖が盛んな理由です。
目当ての貝だけでなく、素敵な出会いもあった神恵内での食材調達。いつか必ず星の塩の金澤さんにお礼に行くと近い。札幌の我が家に戻るのでした。帰ってからも休む間はありません。すぐに食べたい!