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EPISODE #74
【お料理】シンガポールの海南鶏飯
和寒シーズのペポナッツペーストが思い出させてくれた、アジア料理の美味しさ。かつて本場で食べたあの味を、家でも再現出来ないか。
挑戦したのは、鶏肉のスープで炊いたご飯に、ローストした鶏肉をのせたシンガポールの名物料理、海南鶏飯。
今回は、我が家の定番料理に加わった自信作のチキンライスの話。
私は、今年の3月に農産物を取引する会社を辞めてしまいましたが、それまでは、それなりに忙しく、たまに海外出張に行くチャンスもありました。数年前、農産物の輸出の取引で出張したシンガポールで食べたのが、海南鶏飯(ハイナンジーファン)でした。
鶏肉のゆで汁で炊いたご飯に、茹でた鶏肉をぶつ切りにしてのせた料理です。甘い黒糖と醤油のソースや、スパイシーなチリソースが添えられてます。ペポナッツペーストで作ったバンバンジーのタレのアジアンな風味が、この料理を思い出させてくれました。
アジア経済の中心地、シンガポールで食べた思い出の味を、北海道札幌の我が家から100マイル以内で作られた食品だけで再現する試み。久々に男のロマン優先のチャレンジが始まりました。
海南鶏飯は、とてもシンプルな料理です。でも、家庭で作るのが難しい理由が1つだけあります。それは、鶏肉を茹でる→茹で汁でご飯を炊く→ご飯を盛って茹でた鶏肉をのせるという流れ。つまり、先に茹でた鶏を置いといて、後で炊き込みご飯にのせるのです。
これでは、ご飯が炊けるのを待つ間に、鶏肉が冷めて硬くなってしまいます。鶏肉は熱々を食べたい私。材料と手順を変えることにしました。ご飯を炊くのに使うのは、以前、ローストチキンを作った時に、オーブンの角皿に残った鶏の肉汁を律儀に取っておいたもの。そして、鶏肉は、本家と違い、香ばしく焼き上げます。
鶏肉は、もも肉を使います。味付けは、塩:砂糖の比率を2:1にした万能甘辛シーズニングです。ガラスの耐熱皿にシーズニングを揉みこんだもも肉を置き、焼き色がつきやすいように、ハチミツをハケで塗ります。その時、手に入るハーブをのせて焼く準備完了です。オーブンを予熱してから、220℃で10分、200℃で15分ほど焼きます。
鶏肉が焼けるのを待つ間に、2種類のソースを用意しておきます。1つ目のソースは、ペポバンジーに使ったペポナッツペーストの緑色のソースをそのまま流用します。2つ目のソースは、即興でスイートチリソースを作ります。
ですが、まだ唐辛子が手に入っていませんでした。代わりにたまたまあったミョウガと青ジソを刻みます。そこに、家庭菜園の調理用トマトで作っておいたケチャップと、十勝ヒルズのいんげん豆の酢を入れ、塩と砂糖で味を調えて、スイートチリソースは完成です。
狙ったように同じタイミングで、ご飯と鶏肉ができあがります。お皿に盛った熱々の鶏ご飯に、一口大に切った鶏肉をのせます。ちぎったレタスを添え、細かく切ったニンジンとイタリアンパセリをご飯にのせます。ソースも2種類添えたら完成。思ったより簡単です。
初めての料理の時は決まって、子供たちの厳しいジャッジを受けることになります。緑色のソースは警戒されますので、ご飯と鶏肉だけで出しました。鶏肉をパクリ、ご飯を一口。そこからはあっという間でした。すぐに平らげて、おかわりを求めてきました。
私と妻は小さくガッツポーズです。次は、大人が食べる番です。鶏の脂と出汁が染み込んだご飯は、プリプリと歯応えがあって、香ばしい。鶏肉は、ハチミツの甘さが染み込んだパリパリの皮に、しっかり歯応えがある肉。一緒に食べると、溢れる肉汁がご飯に染み込んで絶妙です。
そして、2種類のソース。ペポのコクと甘みの緑色のソースと、香味野菜の香りとトマトとお酢の酸味の赤いソース。肉につけても、ご飯に絡めても、ぴったり合います。これはやみつきになります。
すぐに作れて、子供たちも大人も大好き、さらに、ご馳走感もある料理。これは我が家のおもてなし料理の定番になりそうです。そして、嬉しい誤算がもう1つ。鶏肉を焼いたガラス皿に残ったたっぷりの肉汁。これがあれば、次回の鶏肉ご飯が炊けます。幸せな海南鶏飯スパイラルの始まりです。
海南鶏飯(4人分)
※ローストチキンの残り汁は濃い目の味がついているので、水で薄めて適度な濃さにして使う。ローストチキンの残り汁が無い場合、鶏肉の茹で汁を使い、小さじ1杯半の塩(15g)で味付けする。