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【ラストディナー×お料理】子供の大好物と我が家らしい結末

EPISODE #227

【ラストディナー×お料理】子供の大好物と我が家らしい結末

2018.9.4

お料理

私と妻が始めた1年間の100マイル地元食チャレンジ。3人の子供たちは、言わば巻き込まれてしまった側です。ごめんね、という想いも込めて子供たちが大好きになったメニューも作ります。心と思い出を込めて作った料理たち。美味しくできたでしょうか。

今回はラストディナー編の後編、子供向けメニューとディナー後の感想のお話です。

 

Ocean to Tableのサクラマスの刺身

好きな刺身と言えば、マグロかサーモン。北海道に来る前はそれしか知らなかった長男(6)にとって、この1年間は目新しい地魚との出会いに満ちていました。南茅部の地元のマグロから始まって、黒ソイにヒラメに秋鮭、日高の紅神目抜と、一生分と言ってもよいほどの珍しい刺身を一緒に食べてきました。

最後の夜に食べる刺身は、サクラマスです。寿都町の大串さんと友人の青木君と一緒に、寿都湾の漁船の丸本丸に乗せてもらって、目の前で海から揚がるのを見た、あのサクラマスです。船上で丁寧に血抜きされたマスを港で受け取り、大切に持ち帰って私の包丁で三枚におろし、急速冷凍しておきました。

タモ網ですくい上げられたサクラマス

流水で解凍して、厚めに切って皿に盛ったら、我が家の初めての「Ocean to Table」のお刺身の完成です。レストランSIOの直営農場「Farmland農風景」で掘った「Farm to Table」の山わさびもすり下ろして、自家製の「垂れ味噌」を添えれば、我が家だけの特別なご馳走になりました。

サクラマスの刺身

Ocean to Tableの寿都サクラマスの刺身

 

新得地鶏のカリカリ焼きとお肉ご飯

長男に似て、いつの間にか好き嫌いが多くなってきた長女(3)ですが、お肉が大好きなのは変わりません。特に、塩だけのシンプルな味付けの鶏料理には目がありません。新得町の自動車学校「新得モータースクール」で育てられた新得地鶏をいつものカリカリ焼きにします。

新得地鶏

赤身の色が濃い新得地鶏

新得地鶏のぎゅっと締まったモモ肉は何か所か切れ目を入れて、フライパンで強めの中火で皮から焼きます。皮からしみ出す脂で揚げるように焼いて、皮がカリカリになったらひっくり返します。弱火にして優しく火を通していく間に、香ばしく焼けた皮に、岩内町の金澤さんが作った星の塩をぱらりとかけます。

我が家では、カリカリ焼きには “お肉ご飯” と決まっています。石狩市の「はるきちオーガニックファーム」で鶏の解体をした時にもらった鶏ガラでスープを取ったら、旭川市の米農家「ぬまんち」さんのななつぼしを合わせて土鍋で炊きます。鶏肉と一緒に盛り付けて、カッコよく言えば、シンガポール名物の海南鶏飯、我が家なりに言えばお肉ご飯の完成です。

新得地鶏のカリカリ焼きとお肉ご飯

新得地鶏のカリカリ焼きとお肉ご飯

 

鹿肉の赤ワイン煮に足したかった物

最後にメインの鹿肉の赤ワイン煮を仕上げます。参考にしたレシピ本には、お肉を先に取り出して、煮汁をさらに煮詰めてトロリとしたソースになったら、お肉にかけて完成と書かれています。でも、その通りに煮詰めてもしゃばしゃばのままです。それもそのはず、レシピ本をもう一度よく読むと最後にバターを加えてとろみを出すと書かれていました。

しかも、とろみが無いだけでなく、コクも弱く感じました。たぶん1日ずっと鹿肉を煮込んでいればコクが出るのですが、2時間ほどではまだ鹿肉の旨味が出きっていないのでしょう。更に煮込もうとしても、今夜のラストディナーには間に合わなくなってしまいます。これはどうしてもバターを入れたい。でも、我が家には生産者さんから直接買えたバターはありませんでした。

どうしたものか。たまらず妻と話し合います。このままラストディナーのルールを守って不本意なまま食べる?それとも、ルールは破るけど一番美味しく料理して食べる?こう問いかければ、答えは決まっています。我が家では、生産者さんから受け取った大切な食材を美味しく食べるのが、一番重要なルールです。たっぷりと地元のバターを入れてコクととろみをつけて、鹿肉の赤ワイン煮が完成しました。

むかわのジビエ鹿肉の赤ワイン煮

やっととろみがついた鹿肉の赤ワイン煮

 

感動のラストディナーは意外なほど静かに

1年間のチャレンジの最後に家族で囲む食卓。ずっと走り続けてきたこの1年間、ゴールの瞬間に何を想うのかな、もしかしたら最後は泣いちゃうかも。そんなことを考えながらラストディナーが始まりました。

旬の野菜のペポ和え、サクラマスの刺身、鶏のパリパリ焼きとお肉ご飯に、鹿肉の赤ワイン煮。意外なほどにゆっくりと落ち着いた時間が流れます。すっかり食べ慣れた地元の素材の味と、行き着いた最小限のシンプルな味付け。一口ずつ噛みしめるほどに静かに心が動く、そんな夕飯です。

足元に広がる半径100マイル(160.9km)の地元とのつながりを感じながら、多くの友人達が作ってくれた食べ物を、家族と一緒に食べる。もしかすると足りない物だらけなのかもしれませんが、私たちにとってはこれ以上無い完璧な食事になりました。

子供たちも、大好物の刺身と鶏肉に満足してくれた様子です。彼らが大人になった時に、今夜のディナーのことや、この1年間のことを覚えてくれていれば良いのですが。最後は自分たちで決めたルールを破ってバターを使ってしまったけれど、それも行き当たりばったりの我が家らしいのかもしれません。

そう言えば、さっきから妻がデザートを作っていました。オーブンから漂うやわらかな甘い香り。ラストディナーはもう少しだけ続きます。

 

材料とレシピ

寿都の船上活〆サクラマスの刺身 (4人分)

  • サクラマス 400g 寿都 58mile
  • 山わさび 適量 札幌 2mile
  • 垂れ味噌 適量 自家製
  1. 三枚におろして、皮をひいたサクラマスを、適当な長さの切り身にして、ラップで巻きアルミホイルで巻いて冷凍します。
  2. アニサキス対策で2晩以上冷凍させてから、ホイルとラップを剥がし、ビニール袋に入れて流水で一気に解凍します。
  3. お好みの厚さに切って盛り付け、すりおろした山わさびと垂れ味噌を添えて完成。

 

新得地鶏のカリカリ焼き (4人分)

  • 新得地鶏もも肉 600g 新得 77mile
  • 星の塩 6g 岩内 40mile
  1. もも肉の肉側に、繊維を断ち切る方向に2cm幅で切れ込みを入れる。
  2. フライパンを強めの中火でよく熱してから、皮を下にしてフタをして焼く。身が反ってフライパンから離れない様にたまに身を押しつける。
  3. 身の上の方まで白っぽく火が通ってきたらひっくり返して、弱火にして焼く。焼けた皮面に分量の半分の塩を振る。フタをして5分ほど焼く。
  4. 肉汁がちょっとだけしみ出してきたら火を止めて、ひっくり返し、身の側にも塩を振る。
  5. 食べやすい大きさに切って完成。

 

鶏ガラスープのお肉ご飯(4人分)

  • 鶏ガラ 1羽分 石狩 9mile
  • 千本ネギ 20g 札幌 2mile
  • 日本酒 100ml 新十津川 45mile
  • 米 3合 旭川 73mile
  • 星の塩 13g 岩内 40mile
  1. 鍋に湯を沸かし、鶏ガラを入れ一煮立ちさせる。鶏ガラを取り出して、水道水で血の固まりなどの汚れを洗い流す。
  2. 圧力鍋に2リットルほどの水を入れ、1の鶏ガラ、千本ネギ、日本酒を入れて煮る。沸いてアクが出てきたら取り除き、フタをして20分ほど加熱してから、濾して鶏ガラスープを作る。
  3. 研いだお米に、普段の炊飯と同じ量の2の鶏ガラスープと塩を入れて、30分以上吸水させる。
  4. 普段の炊飯と同じ時間で炊いたら完成。

 

えぞ鹿のすね肉の赤ワイン煮(修正版)(4人分)

  • えぞ鹿のすね肉 600g むかわ 74mile
  • 玉ねぎ 2玉 札幌 2mile
  • 赤ワイン 750ml 札幌 7mile
  • タイム 少々 旭川 73mile
  • 塩 5g 岩内 40mile
  • バター 10g 12mile
  1. 鹿肉を、スライスした1玉分の玉ねぎ、赤ワイン、タイムと一緒に密封できるビニール袋に入れて、一晩マリネする。
  2. 1から鹿肉だけを取り出し、塩を少々(分量外)振ったら、深めの鍋で中火で焼き目をつける。
  3. 1のマリネ液を、2に加え、沸騰したら弱火にして3時間煮込む。
  4. もう1玉の玉ねぎを8分の1に切り、柔らかくなるまでフライパンでじっくり焼く。
  5. 3の鹿肉を取り出して冷めないようにアルミホイルで包んでおく。
  6. 煮汁にバターと塩を加え、半分の量になるまで煮詰めてから、お皿に盛った5の鹿肉の上からかけ、4の玉ねぎを添えて完成。

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