©100マイル地元食
EPISODE #10
時知らずは子供たちのスター
北海道-道央エリア
6月
100マイル地元食を始めたとき、私と妻が特に心配していた食べ物がありました。それは、鮭。もう少し言うと、鮭フレークと鮭ふりかけです。
我が家の3人の子供のうち、兄(5)と妹(3)は、お弁当は鮭フレークおにぎり、夜ご飯には鮭ふりかけご飯。忙しく外出する時は、コンビニで鮭フレークおにぎりを買うことも度々でした。この2つが無ければ、毎日泣き叫んで抗議するのでは。何か手を考えなくては。
鮭フレークに鮭ふりかけ、どちらもスーパーでもコンビニでも買えて、常温保存ができます。時間が無くても、パパッと使えば子供が大好きな味になります。まさに忙しい家庭の味方です。
ですが、この2つの食品は、本当に多くの原材料から作られていて、100マイル地元食ルールに合ったものを探すのは絶望的です。
鮭フレークの鮭は、北海道の秋に獲れる白鮭が使われていることもあって、産地を限定することができます。ですが他にも、油、食塩、砂糖、調味料、着色料、保存料などが入っています。ふりかけも同じようなもの。改めて考えるとすごい物を食べさせていました。
やっぱり、今回も代わりの何かを作らないといけません。
地元産の鮭が獲れ始めるのは9月ごろ。それまで、どうしたらいいか。そんなことを考えながら、スーパーで買い物をしていました。そんな時、鮮魚売り場で出会ったのです、時鮭に。
時鮭、またの名を時知らずは、北海道のさらに北、ロシアのアムール川で生まれた白鮭です。夏から秋にアムール川に遡上する前、5月から6月ごろ、北海道の太平洋側で体力をつけるため回遊している若い鮭です。
秋に産卵のため返ってくる白鮭の秋鮭、またの名を秋味に対して、異なる時に獲れるから、時知らずです。北海道には、鮭の旬が2度来ます。よくぞ我が家の100マイル内に立ち寄ってくれた。鮭の地球規模の大きな営みに感謝します。
まずはおにぎりです。出かける時のお弁当のため、いつでも鮭おにぎりが作れるように準備しておきます。半身の時鮭を1回分の使い切りサイズの切り身にして、塩をふり、この食生活の前に新調した冷凍庫で急速冷凍しておきます。
そのままでは、冷凍であっても味が落ちてしまうので、家庭用真空パックマシーンで個包装しておきます。おにぎりを作る時は、袋に切り込みを入れてレンジで2分加熱すると、ふんわりしっとりの鮭の具になります。
ふりかけは、もう少し複雑です。時鮭だけで作ると量が減ってもったいないので、ふやかしておいたよしかわファームさんの大豆を刻んで入れボリュームをだします。大豆、時鮭、がごめ昆布をフライパンで炒め、日本酒、甘エビ粉、少しの砂糖で味付けして、パラパラに乾くまで加熱します。
しっかり乾いてから、乾燥剤と瓶に詰めて冷蔵保存します。これで1週間は十分にもたせられます。
そして、子供たちの反応です。時鮭おにぎり時鮭ふりかけトッピング。いつもと同じように、静かに口に運び、数秒の沈黙のもぐもぐの後、どんな表情が出るかをソワソワしながら待ちます。
「...おいしい、もっと食べる、おかわり」
これを待っていました。遠くアムール川から来た時鮭が、我が家の大問題を解決してくれました。大人が食べても美味しいこのおにぎりは、今後も我が家の定番メニューになるはずです。
しかし、子供たちの次の一言でまた目の前が真っ暗になります。
「ねー、海苔は?」
課題の芋づる式。宿題の延縄漁業。北海道に海苔はあるのか。この後始まる、水産ウイークへの序章になりました。
時鮭おにぎり
時鮭と大豆のふりかけ