©100マイル地元食
EPISODE #168
【お料理】長女と作る垂れ味噌の足踏みうどん
長女(3)から、うどんが食べたいというリクエスト。作ったばかりの室町時代の醤油のような調味料「垂れ味噌」を使ってうどんを作ることにしました。長女の食への興味は日に日に強まっている気がします。
今回は、うどん作りへの再チャレンジと長女の成長のお話。
我が家の2階にあるオフィス、私はいつもの通りパソコンに向かっていました。
「今日のごはん、うどんでいいの?」
横からひょこっと顔を出した長女(3)が、彼女らしい柔らかい言葉遣いで話しかけてきました。妻に「お父さんが仕事してる時は入っちゃダメ。」と言われていても、長女は内緒で入ってきます。
「うどん食べたいの?作るの大変なんだよなあ。」そう答えても、諦めてくれません。
「やだー、食べたいー。お手伝いするからー。」ここまで言われたら作るしかありません。
昨年6月、100マイル地元食を始めて間もなくの頃、一度うどんを作ったことがありました。あの日、我が家にあった調味料は塩だけでした。何とか形だけを整えた塩味ツユのうどんを、長女はほとんど食べてくれませんでした。でも、今では「垂れ味噌」という心強い味方がいます。
それにしても、長女(3)の食への興味は日に日に強くなっている気がします。遊びはいつもおままごです。小さなおもちゃのお鍋に、トマト、ニンジン、バナナのおもちゃを入れて、ご飯を作ってくれます。
「はいどうぞ。美味しいって言って。」
「うん、美味しいね。」私はいつも言いなりです。
長女が好きな番組は、NHKの「レイチェルのキッチンノート」と「グレーテルのかまど」です。レイチェルが、ヨーロッパを旅しながら各地で愛される伝統料理をアレンジして友人と楽しむ番組と、世界のお菓子にまつわるストーリーを紹介しながらお菓子作りを楽しむ番組。親に趣味が似てきています。
ある日、ポテトチップスが好きな長男(6)が長女に言いました。
「チョコレートばっかり食べちゃ太っちゃうよ。ポテトチップスは野菜だから良いけど。」
例外ルールで久しぶりにチョコレートが食べられた長女が、負けじと言い返します。
「チョコレートはカカオっていう木の実からできてるから良いの。」
まだ3歳なのに、長女の食の知識には驚かされます。
麺作りはもう手慣れたものです。大きくて丈夫なビニール袋の中で、強力粉と薄力粉を合わせたら、塩水を入れて混ぜます。全体に水分が回ったら、一塊にして2時間ほど寝かせておきます。ここからが手打ちうどんの楽しいところ、足で踏んでこねていきます。
長女が手伝うと言っていたのは、この足踏み作業です。床に袋に入った生地を置いたら、上に乗って足踏みで延ばします。大きく広がったら半分に折ってまた足踏み。3歳児にしては大きい方の長女ですが、軽すぎるのかなかなか延びません。私と長女が片足ずつ乗せて踏んでいきます。
いつもはすぐに飽きて遊びに行ってしまう長女ですが、この日は頑張ってくれました。10分ほど踏んで十分にコシが出たところで、パスタマシーンを使って3mmの厚さまで延ばします。長女がハンドルを回し、私が生地を送りこみます。最後に8mmほどの幅にカットして麺はできあがりです。
前回うどんを作った時には、鮭の頭と骨を煮込んで出汁を取りましたが、今は八雲町の鮭節があります。日高昆布と鮭節でいつもより濃い目に出汁を取って、味噌から絞り出した醤油の代わりの調味料「垂れ醤油」と砂糖と酒でツユの味を調えました。
10分ほど茹でたうどんに、煮た鶏肉とネギ、シメジをのせて、ツユをかけたら、長女がリクエストした正真正銘のうどんの完成です。
「あー、普通のうどんだー!」子供たちの驚きと喜びが弾けます。
醤油と変わらない香ばしさと旨味を湛えたツユと、コシがある自家製足踏みうどんがぴったりと合います。すごい勢いで食べてくれる長女。
「おかわりしていいの?」「もちろん!」多めに打っておいたうどんも見事に食べ切ってくれました。
自由に食べたい物が食べられないライフスタイルの中で、かえって食べ物への興味が湧いてくる。私たち親にとって、子供の中で起きる成長は予測できない不思議なものですが、同時に抱きしめてあげたくなるほどに愛おしいものです。
垂れ味噌ダシの足踏みうどん(4人分)
うどんの材料
ツユの分量