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【十勝旅行】出会いの連鎖がくれた美味しさ

EPISODE #50

【十勝旅行】出会いの連鎖がくれた美味しさ

2017.8.21

十勝旅行,食材調達

十勝旅行も4日目の最終日になりました。実は、この日の予定は全く決めていませんでした。そんな日に限って、思い付きの行動と皆さんの優しさ、そしてちょっとの幸運によって、忘れられない出会いと味にたどり着くのでした。

今回は、出会いの連鎖がくれた美味しい食べ物のお話。

最初の出会いをくれたのは谷口さん

少し前に、藤野ワイナリー見学と、我が家でのおもてなしパーティーの際、友人の蝦名さんが連れて来てくれたのが谷口さんでした。途切れる事のない食いしん坊たちのおしゃべりの中で、谷口さんから「紹介してほしい農家さんがいたら、いつでも聞いてね。」とありがたい申し出をしてくれました。旅行の間に谷口さんの言葉を思い出し、メッセージを送ります。

「十勝で面白い農家さんいませんか?」

こんな取り留めのない質問をぶつけてみましてた。谷口さんは、すぐに「吉村さん」という方を紹介してくれました。この方はなかなかすごい人でした。小豆や大豆を扱う丸勝という会社にお勤めで、十勝エリアの幕別町(まくべつちょう)にある、農と食のテーマパーク十勝ヒルズの運営を担当をされているそうです。

これは十勝ヒルズに行くしかない!4日目の行き先が決まりました。吉村さんには家族で会いに行くとだけメッセージを送っておきました。

十勝ヒルズの花、子豚、ミニトマト

十勝ヒルズは、旅の拠点のフェーリエンドルフがある中札内村から北東に15マイル(24㎞)、帯広を見下ろす丘の上にありました。ゲートをくぐり、白く塗られた木の建物を抜けると、白に黄色、青やオレンジと、色とりどりの季節の花が出迎えてくれます。子供たちはというと、花には目もくれず、借りた虫取り網を振り回して蝶を追いかけています。まあ、しょうがないですね。

広いガーデンには動物もいました。元気に動き回る毛がもじゃもじゃの子豚を眺めていると、不意に後ろから声をかけられました。

「鈴木さんですか?」

これが吉村さんと初めて顔を合わせた瞬間でした。作業着に身を包んだ気さくなお兄さん。すぐに仲良くなれそうな温かい人柄を感じました。

「子豚に餌、あげてみるかい?」

吉村さんの突然の提案に、長男(6)は大喜びで応じます。柵の中に手を伸ばし餌を投げ込むと、子豚たちが我先にと駆け寄ってきます。この豚たち、ただの豚ではありません。ヨーロッパから輸入されたマンガリッツァ豚という種類で、母国ハンガリーでは「食べる国宝」とも呼ばれているそうです。こんなにもじゃもじゃでカワイイ子豚たちが、そんなにすごい豚なんて不思議な感じです。

吉村さんは、私たち家族に野菜畑も案内してくれました。この時期は、ハウスの中にミニトマトがたくさんなっていました。畑の管理をされている方も一緒になって、優しく子供たちにミニトマトの採り方を教えてくれます。

実は、子供たちはトマトが好きではありませんでした。手でもぐのが面白いのか、次々に採っては私と妻のところに持ってきて食べさせてくれます。本当に美味しいミニトマトです。私たちはお腹いっぱいになり、子供たちにとっては良い思い出になったようです。

吉村さんが電話した相手は?

ハウスから出ると、ふいに吉村さんが聞いてきます。

「トウキビはもう食べた?」

いえ、まだです、と答えます。すると、吉村さんが携帯を取り出して、誰かに電話し始めました。

「あ、もしもし。これから変わった家族がそっち行くから、トウキビ何本か渡してくれる?頼むね。」

突然のことで、訳が分かりません。

「お土産にトウキビあげるからこの住所に寄って!俺、用事あるからまたね!」

吉村さんは颯爽と仕事に戻って行きました。去り際までさっぱりと気持ちの良い方です。

指示された住所まで、ドキドキしながら車を走らせます。あれだけの短い電話で意味もわからず、私たちが突然押しかけたら、普通の人なら迷惑なんじゃない?戸惑いながらもここまで来たら行ってみるしかありません。

吉村さんのお取引先でご友人の、農家さんのお宅でした。かなりドキドキしながら車で20分ぐらいの距離を走ります。

出会いの連鎖のゴールは斎藤農場

広大な畑の中を走る道、たまに大きな家と倉庫がポツンと建っています。これが日本屈指の農業地帯、十勝の景色です。教えてもらった住所に着きました。農業用の大きな納屋がありますが、人が見当たりません。教えてもらった番号に電話してみると、今行きます、との返事。奥の畑の方から一人の男性が歩いてきました。それが、斎藤農場の斎藤一成さんでした。

一成さんは、有機栽培で、じゃがいもやスイートコーン、ニンジンなどを育てているそうです。吉村さんとは、農産物の取引で深いつながりがあったようです。

「あのー、吉村さんからトウキビもらってって言われたんですけど?」

斎藤さんも事情がよく飲み込めないようでしたが、「あ、はい」と冷蔵倉庫からたくさんスイートコーンが入ったカゴを持ってきてくれました。そこには、実の入りが悪く商品にならなかった自宅用のトウキビが入っていました。皮を剥いてくれた真っ白なホワイトコーンを、勧められるまま生でかじりました。甘い汁がジュワっと溢れ出します。どんな果物にも負けないほど甘くて驚きました。

好きなだけ持って行ってというお言葉に甘えて、白いコーンと黄色いコーンを何本かずつ袋に入れながら、我が家の100マイル地元食チャレンジについて説明します。

「あ、そーゆーことなのか。よく変わった人達に会うけど、お宅もかなり変わってますね。」

変わっていると言われても、最近は嬉しく感じるようになっていました。

「なら、じゃがいもも持っていくかい?」

斎藤さんは、また倉庫に入ると、今度はビニール袋いっぱいのじゃがいもを持って出てきました。去年の秋に収穫したのを大事に寝かせておいたものでした。じゃがいもが大好きな長男(6)と長女(3)は、急に興味が湧いたようで喜んでいます。ありがとうございます。

十勝旅行の終わり 気になることが1つ

斎藤さんには、また来ます!と図々しい別れを告げ、家路につきました。長いようで短かった4日間の十勝旅行からの帰り道、気がかりなことが1つありました。それは斎藤農場と我が家の距離。もし、100マイル(160.9㎞)を超えていたら、せっかくもらったトウキビもじゃがいもも持ち帰って食べることができません。そうなれば、もう1泊して、意地でも食べ切ってから帰るしかありません。地図アプリで計ってみると、なんと98マイル!ギリギリで範囲内でした。

出会いの連鎖と十勝の皆さんの優しさがくれた貴重な食材。家に帰った翌日、トウキビは茹でて、じゃがいもはフライドポテトにして、早速いただくのでした。

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