私たち消費者は、常に価値のある食べ物を探しています。美味しいもの、身体に良いもの、お買い得なものに高級なもの。でも、食べる事の価値は、それだけで決まるものじゃありません。多くの人の想いや、私自身の感情までもが、食べる事の価値を決める大切な要素であるはずです。

今回は、1年間のチャレンジを記録したブログの最終回。我が家が気が付いた、あなたの食生活をより幸せにできる3つのヒントについてのお話です。

 

①共感じゃなく感動を求める

私がかつてどっぷりと浸かっていた現代都会人の食生活は、実は「共感」に溢れています。スーパーに行けば農家さんの写真付きの商品説明があり、TVやネット広告ではアットホームな家族の食卓のシーンが流れてきます。なんか素敵、なんかホッとする、「共感」をうまく使って多くの物が売られています。

でも、そこに「私」はいません。本物か作り物かに関わらず、共感する対象は他人が主役のストーリーだからです。共感して買って食べる。そしたらまた次の共感を探す。いつまで経っても「私」に出会うことはできません。

現代都会人は、便利さを求めすぎるあまり、食べ物を口に運び、飲み込むこと以外の時間を、お金を払って人任せにしています。あなたが無駄だと思って省略してしまった時間の中に「私」はいます。苦労して生産者さんを見つけ、仲良くなって手渡しで食材を買う。上手ではなくても頑張って料理する。生産者さんと過ごした体験が蘇り、家族や友人たちと共有しながら食べる。「私」が主役のストーリーには「感動」があります。

誰かが作った「共感」で満足していてはもったいないのです。あなたが「感動」するチャンスが目の前に転がっているのに。

 

②消費者も価値を生み出せる

ある時から、妻と私は積極的に外に出て生産者さんに会いに行くようにしました。せっかく地元の食材を食べているのだから、地元の生産者さんに会って直接買いたい。ただ、少し心配でした。こんなおかしな消費者が来たら、慣れていない生産者さんに警戒されるんじゃないかな。

でも、それはただの取り越し苦労でした。私たちを受け入れてくれた生産者さんの多くが、消費者と過ごす時間を楽しんでいるように見えました。時には私たち以上に。多くの消費者が、食べ物の中に生産者さんの存在を感じて安心するように、生産者さんだって消費者の存在を感じたかったのかもしれません。

私たち消費者にとって生産者さんは、大切な食べ物を作ってくれる価値ある存在。逆に、生産者さんから見た消費者は、想いを込めて作った食べ物を喜んで食べてくれる価値ある存在です。消費者だって、価値を生み出せる。現代都会人の生活の中で、生産者さんと消費者は遠く離れ、時にすれ違い、誤解しあっているかもしれません。でも、お互いの価値を認めあった素敵な両想いの関係なのです。

イトトンボ

 

③自分だけの食生活をカスタマイズする

100マイル地元食のルールでは、自分を中心にした半径100マイル(160.9km)の円があなたの地元になります。厳密に言えば、10mだけ離れた部屋に住む隣人は、10mだけ違う地元を持っています。ですから、あなたの地元食は、世界に1つのあなただけの地元食なのです。

もっと言えば、シンプルな100マイルルールをどう都合よく解釈するか、行き当たりばったりの例外ルールをどう設定するかで、あなたの食生活はより個性的になります。我が家のルールの原案になったカナダのバンクーバーに住む「The 100-Mile Diet -A year of local eating-」の著者は、食べ物に含まれる範囲外の食材を1%まで認めていました。これによって、加工品や外食も少しだけOKにしていたのです。

ルールを守ることは大切です。理不尽な苦労は、時に感動を何倍にもしてくれる増幅装置になるからです。でも、食生活以外の仕事や交友関係や大切な家族との関係が壊れてしまうぐらいなら、ルールは都合よく変えてしまうべきです。何に迷い、どんな例外ルールを決め、どう救われたのか。それもあなたが作った自分だけのストーリーになります。

穂別キャンプ場

 

あなたがそれを食べる理由

私は正直なところ、1年間のチャレンジを始めたことで救われました。一生をかける仕事にしようと飛び込んだ食品業界で、私自身の食生活さえも見失いもがいていました。そんな私たちを助けてくれたのが100マイル地元食でした。何が私にとっての幸せな食生活なのかに気付き、どう実現できるのかも知ることができたのです。

もし、あの頃の私と同じように、ご自分の食生活に疑問や違和感を抱いている現代都会人がいたら、同じようにチャレンジしてみて欲しいのです。不自由さと引き換えに翼が生えたように活き活きと始まる毎日のストーリー。あなた自身が主役で価値ある存在になれる食生活。今まで味わったことが無い感動に出会えるかもしれません。

今の食べ物に不満を持っているとしても、あなたには食べ続けている理由があります。それは、コストパフォーマンスでしょうか、時間が無くてもすぐ食べられるからでしょうか、それとも生きるのに最低限必要な栄養を摂れるから?

それなら、感動している「私」に出会えるから、という理由はどうでしょうか?本当に美味しくて楽しいと思える物を食べる。それだけで、あなたを中心とした地元という世界が変わっていきます。一足お先に始めた我が家も、100マイル地元食の可能性のすべてをまだ理解できていません。もう少ししたら、また初めても良いかな。今のところ、家族も嫌ではないようです。