子供が好きな食べ物には何が入っているのか?私たち親には気になるものです。作った人も、入っている材料も、すべて分かっている食べ物を食べられる。これも100マイル地元食の魅力の1つです。

今回は、世界一正直な作り方をしている喜多牧場のソフトクリームのお話です。

 

流氷押し寄せる冬のオホーツク海

北海道の北東、オホーツク海に面した紋別市を仕事で訪れることになりました。冬のオホーツク海を見たことが無かった我が家、家族全員で一緒に行くことにしました。今回は、仕事が始まるまでの2日間だけの小旅行です。せっかくなので、前々から行ってみたかった牧場に立ち寄ることにしました。

地図
札幌市から紋別市までは車で4時間の道のり

我が家がある札幌市から紋別市までは、車で280km、4時間以上の道のりです。強烈な寒波が北海道を覆い、いつもは雪が少ないエリアですが、この日ばかりは前が見えないほどの大雪です。私たちが紋別市を訪れた2月初めは、ちょうど北風に流された流氷が接岸する時期でした。

紋別港名物の「流氷破氷船ガリンコ号Ⅱ」に乗ると、厚さが30cmはありそうな分厚い流氷が、沖のさらにその先までずっと続いているのがわかります。紋別市は、流氷が接岸してから本格的な冬の寒さを迎えます。船から降りた私たちは、友人の喜多さんご夫妻が経営しているオホーツクファーム喜多牧場に向かいました。

ガリンコ号
流氷の中を突き進むガリンコ号

 

牛乳が生まれる場所を五感で体験する

オホーツクファーム喜多牧場は、紋別市の上渚滑町(かみしょこつちょう)にある、900頭近い乳牛を飼育している酪農家さんです。酪農家の強みを活かして、出産直後の母親牛から絞られる初乳を餌にしてブランド豚 “上しょこつ豚” も育てています。

喜多さんご夫妻は、私たち家族を、たくさんの成牛が餌を食べている牛舎や、まだ小さい仔牛がミルクを飲んでいる牛舎、搾乳をおこなうミルクパーラーまで見せてくれました。発酵した牧草の香り、牛たちがひしめき合う熱気、いつも見ている牛乳はこんな牧場で作られている。子供たちも五感を通して理解しているようです。

若い乳牛
喜多牧場で大切に育てられている乳牛

喜多牧場には、自家製の乳製品や “上しょこつ豚” のハンバーグなどが食べられる牧場カフェ「みるとんはうす」があります。ハンバーグカレーやミートソーススパゲッティが近所のお客さんに愛されているそうです。ここに来たら必ず食べたかったのが自家製のソフトクリームでした。

由美さん
みるとんはうすを切り盛りする由美さん

 

生乳と砂糖だけのソフトクリーム

長女(3)は、いつからかソフトクリームのとろける甘さの虜になってしまいました。どこに行っても、あの白くて大きな看板が目に付く北海道では、行く先々でおねだりしてきます。でも、100マイル地元食の挑戦を始めてからは、100マイル範囲外の材料が使われることが多いソフトクリームは買うことができませんでした。

ですが、「みるとんはうす」のソフトクリームは違いました。材料は、喜多牧場で生産されたばかりの生乳と、道東エリアで作られているお砂糖だけです。長女(3)の念願がかない、やっと食べられることになりました。

ソフトクリームと長女
大切そうにソフトクリームを食べる長女

カップに入った真っ白なソフトクリームを、ほんのちょっとずつスプーンですくって食べています。その姿が面白くて、どうしてちょっとずつ食べるの?と聞きました。

「無くならないように、ちょっとずつ食べてるの。」

彼女にとっては、本当に久しぶりの夢にまで見た味です。大切に、大切に、確認するように食べていました。

 

自分が何からできているかということ

あまりにもゆっくりソフトクリームを食べる長女に、由美さんがニコニコしながら言います。

「あんまりゆっくり食べてると、溶けて甘い牛乳になっちゃうよ。」

ソフトクリームが溶けたら、ただの甘い牛乳になるなんて、なんて正直な食べ物なんだろう。私と妻は思いました。普通は、牛乳と砂糖以外にもいろいろな材料を入れて味を組み立てています。でも、「みるとんはうす」のソフトクリームは生乳と砂糖だけ。その分、くどさの無い優しい甘さで生乳本来の香りを感じます。

「You are what you eat.」(あなたの身体はあなたが食べたものでできている。)という言葉があります。いつか自分の身体になる食べ物なのだから、正直な物を食べたい。まして、子供が食べる物なら尚更です。喜多ご夫妻の温かい気持ちがこもったソフトクリームが、すっと私たちのお腹の中にしみ込んできました。

帰りしな、由美さんがもう一つソフトクリームをお土産にくれました。長女が見せた素直な喜びが嬉しかったそうです。正直な食べ物がつないでくれた、作る人と食べる人の幸せな関係です。