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地元食材は高いと知った日

EPISODE #2

地元食材は高いと知った日

2017.6.5

食材調達,ストーリー,シーズン1

「100マイル地元食」を始めた初日、家に残っていた今までの食べ物が、今後も食べられるかどうか調べてみました。すると、ほとんどが100マイル範囲外から来た、食べ物であることがわかりました。これからも生きていくためには、新しいルールでも買える食べ物を探さないといけません。

 慌てて近くのスーパーに買い物に行くと、あれ、と気づくことがありました。今まで当たり前のように買っていたものが買えない。それに、新ルールで買うことができる地元食材は値段が高すぎるのです。初日にして、挑戦への決意を揺るがす事態です。

いつものスーパーが違って見えてくる

 いつも、休みの日に家族で夕飯の買い出しをしたり、仕事帰りに立ち寄ってお惣菜を買ったり、我が家の馴染みのスーパーが駅前にあります。でも、今日は少し気分が違います。自分から100マイルの範囲内で生産された食べ物をだけを購入する、「100マイル地元食ルール」があるからです。

 広い店内、私だけが緊張とワクワクが混在する不思議な心持ちで買い物をしていることを、他のどの客も誰も知りません。購入できる食べ物が無かったら、家族はがっかりするだろうか。ずっと買える物が見つからなかったら、北海道に移住してきてから蓄えたお腹のぜい肉が、スリムになってしまうだろうか。

 人生を左右するミッションを背負った父親の、初めてのおつかいです。

生鮮食品は地元食材がいっぱい

 入口近くの青果売り場には、いつも通り新鮮な野菜や果物が並んでいます。6月の北海道はまだまだ肌寒い日もあって、関東で育った私にとっては夏どころか春のような陽気です。地元の野菜はまだ出てないかな。そう思って棚を見て歩くと、そんな不安はすぐに吹き飛びました。

 青々としたほうれん草に小松菜、白く輝く長ネギ、白菜、まだ頑張っている去年秋に採れたはずのじゃがいもや玉ねぎ。葉物野菜は函館から。根菜は富良野から来ていて、100マイル内です。千歳の植物工場のトマトも買えました。

 でも果物は、バナナ、グレープフルーツにレッドグローブと輸入品ばかり。数か月前まで、私自身が商社マンとして世界中から輸入していた商品です。「100マイル地元食ルール」では、到底食べることができません。国内で作られた果物は、イチゴや柑橘類がありますが、どれも遠く九州や本州のものでした。残念ながら範囲外です。

 魚はと言うと、さすが海に近い札幌、今が旬の石狩湾の真がれいに、近頃は北海道でも獲れるようになったブリ。お肉は、北海道産と書かれた牛、豚、鶏がありますが、それだけでは100マイル内かどうかわかりません。北海道は、100マイル範囲をはるかに越えて広大だからです。唯一買えたものは、札幌近くの産地名が書かれた三元豚でした。卵や牛乳は、これまでも近くの生産者やメーカーのものを買っていたので、いつも通りに買うことができました。

 少しだけ期待していた調味料や加工食品は、やっぱり空振りです。多くの原料がどこから来たかわからないものばかり。北海道産大豆を使った醬油でも、食塩の故郷がわからず買うことができません。

地元食材だけの買い物はいつもより高くつく

 新しいルールでの買い物という戦いを終えてレジに辿りつくと、気づいたことがありました。生鮮食品しか買っていないのに、お会計がいつもの倍近く高いのです。こんなにいっぱい払ったなんて、家に帰ったらなんて言おう。レシートを見つめながら言い訳を考えます。

 野菜は豊富にあったとはいえ、まだまだ旬前の高値の時期。魚も天然近海物ばかりで、いつものノルウェー産塩サバよりももちろん高い。産地ブランドの高級黒豚は目が飛び出るほどの値段です。

 今日はまだ「100マイル地元食」生活の初日。高い授業料だと自分を納得させて、とぼとぼと家路につきます。でも、遠い土地から送られてくる食べ物より、車ですぐ行ける距離の食べ物の方が高い。なぜなのか、この時の私には意味がわかりませんでした。

 確かに言えることは、こんな買い物をしていたら、すぐに家計は破たんしてしまうということです。これまでの食べ物の買い方を変える必要があると感じた、意味のある初日のレッスンでした。

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