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今日から始まる地元食ライフ

EPISODE #1

今日から始まる地元食ライフ

2017.6.5

ストーリー,シーズン1

 我が家の冷蔵庫、棚、階段の下、あらゆる場所にしまい込まれていた全ての食品をテーブルに並べてみると、あまりの種類と量の多さに驚きます。この食べ物たちが、どこで、誰が、どんな材料を使って作り、どうやって我が家まで届いたのかを考えると途方に暮れます。遠くから来た食品を別にして、“ 地元産 ”の食べ物だけを残してみると、テーブルにわずかに残るだけでした。

「100マイル地元食」ってなに?

 私は北海道の札幌に住む30代の普通の父親です。妻と子供3人の5人家族。3人目の子供が生まれたことをきっかけに、我が家は新しいライフスタイルを始めました。それが「100マイル地元食」。自分から半径100マイル(160.9㎞)の範囲内で生産、加工、調理された食べ物だけを食べて生きていく生活です。

 現代人の、それも都会暮らしの便利な食生活に慣れきった我が家(現代都会人と呼ぶことにします。)が、こんなライフスタイルを始めるには、相当の苦労があるはずです。ですが、どこで誰が作ったかわからない食べ物を、ただ無自覚に食べるのはやめることにします。今日からは、私たちが住むこの北海道という土地で、地元の誰かが作ってくれている食べ物だけを食べて生きていきます。

モデルはカナダ西海岸発祥の “ The 100-Mile Diet ”

 この風変わりなライフスタイルは、カナダの西海岸にあるバンクーバーという大都市で、ある男女2人が始めた「The 100-Mile Diet」(100マイルダイエット)がモデルです。2人は、1年間の挑戦の様子をまとめた本「The 100-Mile Diet: A Year of Local Eating」(Random House)を、2007年に出版しました。

 2人は、何気なく食べてきた食品たちが、いったいどこから来たのか疑問を持ったことをきっかけに、新しい食生活のルールを考え出しました。食べる物が無い!と苦労しながらも、地元産の食品を再発見しながら、少しずつ食生活を充実させていきました。この挑戦は、隣のアメリカ合衆国にも浸透し、世界の多くの現代都会人の共感を呼びました。その後、「Locavore」という、地域の食べ物を食べる人々(ローカル+○○食動物の造語)を意味する新しい消費者グループに発展しました。

家にある食べ物はほとんど食べられない

 今日から、我が家がある札幌、そして北海道を舞台に、新しい食生活を始めることにしました。まずは、家に残っていた食べ物から見直すことにしました。

 まずは、米や小麦粉、乾物に、冷蔵庫の中身です。今までの食生活で慣れ親しんだ食べ物たち。我が家から100マイルの範囲内の食べ物だけを残すと、米と日高昆布、生野菜だけになってしまいました。

 次に、調味料、今まで少しずつ買い集めた自慢のスパイスたち、我が家が頼り切っていた加工食品に飲み物です。こちらも100マイル内のものだけを残します。

 米油、トマトジュース、ワインにポップコーンだけになってしまいました。

「今この瞬間から、食べていける物が無い。」

 今まで味わったことが無い、言いようのない不安を感じます。今まで積み上げてきたライフスタイルだけでなく、培ってきた価値観までも崩れ落ちるような不思議な感覚でした。

いかに無自覚に食べ物を選んでいたか

 現代都会人は、お金さえ出せば、誰もが自分の食べたい食べ物を、いつどこでも購入することができます。その時、なにも基準を持たなければ、地球の裏側から届いた食べ物でも、どこで誰が作ったのか全く分からない食べ物まで、なんだって買うことができます。

 我が家のテーブルから取り去られた食べ物の中には、本当に食べたかったのかわからない、家に残っていることさえ忘れてしまった食べ物もありました。コンビニやスーパーの店内に立っても、ネット動画やテレビを観ても、どこに行っても目や耳から飛び込んでくる食べ物の広告を、無自覚に受け入れた結果が、この無残な食べ物の山なのかもしれません。

 そんなことを感じた「100マイル地元食」の1年間の1日目。とりあえず、この食べ物を捨てるわけにいかないので、1週間の期間限定で、できるだけ無駄にせず食べることにしました。最近流行りのサルベージ・パーティーWeekの始まりです。

コメント

  1. ひろゆき より:

    興味のある試みですね。食の北海道と言われている中、いつも間にか知らず知らずに地元の食材に興味をもたずに、目に見える物、手に取りやすものだけを買ってしまう世の中で、新しい家族の誕生を機に5人家族の新生活を応援します。

    • 鈴木 俊介 より:

      メッセージいただきありがとうございます。

      この食生活を始めて気が付いたことは、人間は、スーパーのPOPに書かれている字だけでは、食べ物の価値を理解できないということです。生産者に合って、話を聞いて、食材に触れて、匂いを嗅いで、味見して、五感を使って初めて本当の価値まで理解できると思います。こうしないといけない、ではなく、こんな楽しいことをしてないなんてもったいない。そういう前向きな姿勢で頑張っていきたいと思います。

      応援ありがとうございます。ぜひ真似してみてください!

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