雪が降ろうが、風が吹こうが、魚を買いに行きます。スーパーから地元の魚が消える季節、冬の世界に躊躇すれば、100マイル地元食は続けられません。

今回は、雪のロングドライブの先の寿都漁港で出会った、まん丸ぶよぶよの魚のお話です。

穏やかな雪の合間の海を見たら

我が家がある札幌は、北に日本海、南にずっと行くと太平洋があります。一年中、新鮮な魚や貝が手に入る、恵まれた土地です。ですが、冬の海はたびたび荒れて、漁が行われなければ、その日は魚が水揚げされず、地元の店にも並びません。

前日、たまたま北の海沿いを車で走っていました。いつもの北西からの季節風は止み、水平線までずっと穏やかな海。こんな日であれば、漁師さんたちも海に出られるはずです。魚が食べたい。ですが、この日はすでに夕方。魚を買いに行く時間はありませんでした。

なぜなら、我が家が鮮魚を買いに行くお店は、太平洋側の東静内に1軒日本海側の寿都漁港に1軒。どちらも車で3時間の距離にあり、買い物は、いつも1日がかりになってしまいます。よし、明日朝早く出て買いに行こう。この日はいさぎよく諦めました。

ホワイトアウトの中のロングドライブ

目指したのは、日本海に面した寿都漁港の直売所、すっつ浜直市場です。運転し始めて、すぐにまずいと感じました。昨日の穏やかな天気は、すでにどこかに去り、いつもの強い北風が吹いていました。札幌から小樽につながる札樽道に乗った頃には、雪がちらつき始めていました。

港町小樽を通り過ぎる頃には、前の車が見えなくなる程の大雪です。強く巻く浜風と、積もり始めた雪とでハンドルが取られます。こんな道を3時間も走ってられない、引き返すなら早い方がいい...でも魚を買わずに手ぶらで帰りたくない。

なんとか先の余市から峠道に入ると、山が壁になって風雪が弱まりました。これなら何とかなるかもしれない。途中の岩内町で、いつもの地元の塩、星の塩を買い貯めしました。いつか作ってくれている漁師さんに会いたいと思いながらも、この日は先を急ぎます。

車が凍りつくほどの風雪
車が凍りつくほどの風雪
やっぱり寿都は信頼を裏切らない

岩内町から寿都町は、海沿いに走って1時間ほどでした。道に降った雪が、強烈な横風で地を這い、灰色の海から手を伸ばす生き物のようです。やっと到着した寿都漁港の直売所も、真っ白な雪景色の中にありました。

雪景色の寿都漁港
雪景色の寿都漁港

魚は本当に並んでいるか。ドアを開けると、氷が敷き詰められた3つの大きなショーケースに、寿都港に揚がった鮮魚がいつものように並んでいました。風にも負けず、漁に出られたそうです。危うい賭けでしたが勝ちました。ホッケにカジカ、カレイやブリもいます。

雪が降っても並ぶ地元の鮮魚
雪が降っても並ぶ地元の鮮魚

この日は、刺身にしたいヒラメ、丸々と太って美味しそうな黒ソイ、妻がたぶん食べたがる甘えびを買うことにしました。でも、あれ?これはなんだろう?初めて見る魚が売られています。お腹に大きな丸い吸盤?が付いた黒くて丸くてぶよぶよした魚でした。

中央の丸い魚
中央の丸い魚が気になる
北の海の旬の魚

気になって、「魚、吸盤、腹」で検索してみると、すぐに出てきました。ごっこ。本名はホテイウオという、普段は深い海に棲み、冬になると産卵で浅瀬に寄ってくる魚でした。北海道では、ごっこ汁という汁物で食べるのが定番のようです。

吹雪の中を頑張って寿都まで来たのは、この魚に出会うためだったかもしれない。運命的な何かを感じて買うことにしました。この日は卵を持つメスが無くて、2匹の大きなオスを選びました。骨が無いのではと思うほどぶよぶよでカエルのようです。

ごっこ
オスのごっこ お腹の丸は吸盤

お店のお母さんが「海苔はあるの?」と聞いてきました。「へ?海苔ですか?」お母さんは、何も知らない私に、ごっこ汁には岩海苔が欠かせないことを教えてくれました。これは良いことを聞きました。迷わず買い物カゴに入れました。

帰り道は、海沿いを避けて内陸を走りました。やっぱり3時間かかりましたが、風雪はしのげますし、偶然、こんな景色にも出会うことができました。岩海苔入りのごっこ汁。楽しみです。

帰り道で出会った雪景色
帰り道で出会った雪景色