一縷の望みにかけて蘭越町まで駆けつけた我が家を、無情の雨と雷が待っていました。ついに見ることができなかった黒川農場さんの稲刈り

もう今年の100マイル地元食チャレンジの中では稲刈りが見られないかもしれない。そう考えていた私たちを、またしても友情が助けてくれました

今回は、旭川まで追いかけたぬまんちの稲刈りのお話。

やっと見つかった米農家さん

我が家の100マイル地元食チャレンジでは、100マイル(160.9km)範囲内で作られた食べ物だけで生活しています。そんな中で、生産者さんから直接買って食べることで、何倍も美味しくなることに気が付いた私たち。

毎日食べるお米も、米農家さんと出会い、稲刈りを見たものを食べたい。こう考えた時は、それがどんなに難しい事なのか考えてもみませんでした。農家さんにとっての収穫期は、実は消費者から一番遠くにいるタイミングだったのかもしれません。

1か月間いくら走り回っても出会えなかった米農家さん。途方に暮れていた時、助けてくれたのは、以前我が家にも来ていただいた友人の蝦名さんでした。「旭川に仲良しの米農家さんがいて、見せてくれるかもしれない。」この言葉に飛びついて、ご紹介いただいたのが沼澤さんでした。

ぬまんちの沼澤さんご夫妻との出会い

メッセンジャーでご相談した沼澤さんは、稲刈りの見学を快く許してくれました。そして、運命の日の前夜、「明日、稲刈り決行!」のご連絡をもらいました。翌朝、平日だったので私1人で車を走らせ、札幌から北東に2時間、旭川の沼澤さん、農家ぬまんちの田んぼに向かいました。

太い幹線道路から山間の道道に入ると、すぐにぬまんちの水田が見えてきました。すでに、コンバインに乗って稲刈りを始めていた旦那さん、忙しそうに準備に追われていた奥さん。作業の手を止めて、ご挨拶していただけました

「他にも米農家さんがいるのに、うちの田んぼなんかで良いんでしょうか?」恐縮されている様子。「とんでもない!私にとっては、沼澤さんが世界で唯一受け入れてくれた農家さんなんです!」私の妙なテンションに気圧されて、お二人は作業に戻ります。

進むコンバインを撮る特別な瞬間

そこから3時間は、私にとって特別な時間になりました。この日、稲刈りをしたのは、沼澤さんが育てられた水田のうちの最後の2枚。どちらも、消費者に直売するために作ったななつぼしです。私は、今年最後の稲を刈る瞬間に、立ち会えたのです。

旦那さんが乗ったコンバインが、けたたましい機械音を鳴らして前進すると、1本も余すことなく稲が吸い込まれていきます。刈り取られた稲がコンバインの脇をぐるりと回りながら、脱穀された籾だけがタンクに貯められます。細かく刻まれた稲わらが、後ろから飛び出してきます。

手刈りに比べれば圧倒的に早い作業ですが、そこは広い水田、ゆっくりと作業は進んでいきます。邪魔にならないように畔を走り回りながら、その様子を夢中でカメラに収める私。通りすがりの人から見れば、またしても不思議な光景だったはずです。

命が輝く水田で

季節はすでに秋終盤。稲刈りを待つ水田は、寂しい場所だと思っていました。しかし、それは全くの考え違いでした。数えきれないほどの種類のトンボが産卵のために飛び交い、歩くたびにカエルが水田に飛び込みます。数日前の雨でできた水たまりにドジョウが泳ぎ、空にはそれを狙って鳶が回っています。

春の苗作りから始まった沼澤さんの米作りは、この日まで毎日続いてきました。生き物の躍動と、農家さんの努力、全てがこの瞬間に頂点を迎え、9月の強い陽光を浴びて輝いています。一年の内、水田が一番美しく輝く瞬間に立ち会えました。

2枚目の水田の稲刈りも順調に進み、残った稲が少なくなりました。あとコンバインの何往復かで稲刈りも終わってしまいます。毎日食べているお米は、どこかで必ずこの日を迎え食卓に届いている。考えれば当たり前ですが、今まで考えたこともありませんでした。

早くこのお米を食べたい!

稲刈りの瞬間は、水田が一番光り輝く時でした。おそらく、この瞬間に立ち会えたかどうかで、食べる米の味は全く違って感じられるはずです。生き物と農家さんの営みが米粒に集約されています。大昔に祖母から言われた、米粒を残すなの意味が、自分事として腹に落ちます。

稲刈りの作業が全て終わり、田んぼの横で撮らせてもらった沼澤さんご夫婦と犬の写真。仕事を終えた水田の前に立ち、農家さんの顔も輝いていました。この場に居合わせられたのは、沼澤さんご夫婦のホスピタリティのおかげでした。

来年は、子供たちにも見せてあげたい。そのためにも、沼澤さんのお米をしっかりと食べて、いつでも会える関係を築いていきたい。帰りの車内、お土産としていただいた昨年収穫のななつぼしをチラチラ見ながら、来月にならないと買えない、今日の新米に期待するのでした