100マイル地元食を始めてから、農家さんに会いに行ける機会をいつも探しています。少し前に、札幌市内で野菜を作られているファーム伊達家さんの見学ツアーに参加しました。

そこでは、自然栽培という、私の常識とはかけ離れた、ちょっと不思議で、とても素晴らしい農業が行われていました。美しい農園は、まるで別の世界のよう。

今回は、農業の奥深い別世界を覗き込んだ、ある1日のお話。

畑に何も足さない自然栽培

自然栽培という言葉を、最近よく耳にするようになりました。1930年代から続いている伝統ある栽培方法です。しかし、これだけ知られるようになったきっかけは、やはり青森のリンゴ農家木村秋則さんを追ったドキュメンタリー「奇跡のリンゴ」(2008、幻冬舎)です。

自然栽培は、土に加えるのは種や苗だけで、肥料や農薬は一切使わない農業です。私も農産物を扱う仕事をしていましたし、家庭菜園もやっていますので、それがどれだけ大変で、あり得ないな事か想像できます。

野菜の苗を植える前に堆肥や肥料を撒き、育ってきたらまた肥料を追加します。病気や虫の予兆が見えるか、もしくは予兆が見える前に農薬を撒きます。これが教科書に載っている普通の農業です。この常識から考えると、自然栽培はにわかには信じがたい農業です。

地域の消費者が支える農業

ファーム伊達家は、伊達さんご夫妻と研修中の方の3人で野菜を作っています。公務員をされていた旦那さんが、ずっと夢だった自然栽培での野菜作りを札幌市南区の豊滝で始めました。作っているのは、ズッキーニ、さやえんどう、いんげん、豆、きゅうり、トマト、カボチャ、葉物野菜と多種多様です。

伊達さんの野菜は普通のスーパーや道の駅では買えません。多くとれた時のギフト販売を除いて、主に近隣の方たちの会員さんにだけ届けられます。会員さんは、年会費を払って、ファームに野菜がある季節に、何度も野菜が詰め合わせられた箱を購入できます。

この仕組みを、CSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)というそうです。農家さんと消費者が直接つながる新しい形の農業です。1年間の100マイル地元食に挑戦している我が家としては、自然栽培ももちろんですが、このCSAにも興味あありました。

確かにそこにある信じられない野菜たち

伊達さんご夫婦は、畑見学ツアーに申し込んだ参加者たちを率いて、ひとつひとつ育てている野菜を説明してくれます。まず、ファーム伊達家の人気商品のズッキーニで度肝を抜かれます。伊達さんが自然栽培を始めてから、13年間一度も肥料をあげてない畑で、本当に見事なズッキーニが育っています。

自然栽培で大切なことの1つに、毎年、一番育ちが良かった株から種を取り続けること。始めて数年目で、土の中の養分を野菜が吸い切ると、だんだんと育ちが悪くなってきます。そんな中でも、わずかですが育ちが良い株がある。その種を取って、次の年に植え、同じことを続ける。そうすることで、養分が少ない土でも力強く育つ野菜になっていくそうです。

それに、毎年土に入れる肥料は自然のサイクルには余分なもので、不必要に野菜の株を大きくするのに使われたり、雑草が生えてしまう原因になります。つまり、自然のサイクルにまかせ、野菜の潜在能力を引き出し、後は野菜に任せるのが自然栽培だと言えます。

聞いていても、なかなか信じられない理屈。ですが、見学ツアーが進むうち、これはもしかしたら本当なのかもしれないと思い始めました。なぜなら、ファームには本当にイキイキとした生命の力強さを見せる野菜たちが育っているからです。それは、本当に心揺さぶられる体験でした。

素直な気持ちで感じたものだけを信じる

常識だと疑ってこなかった世界は、ただ唯一の世界ではない。見ていなかっただけで、他にも世界があり、また別の理で動いている。でも、今いる世界に長くいればいるほど、それが先入観になり、別の世界を受け入れることが難しくなる。

ファーム伊達家の見学ツアーに参加していた2時間ほどで、私の常識はガラガラと崩れ落ちました。そして、心から、ファーム伊達家の自然栽培の野菜が食べてたくなりました

ですが、本当に残念なことに、すでに今年のCSAの会員枠はいっぱいで買うことができなかったのです。来年まで待たないといけないのか...と思っていたら、伊達さんのご厚意で、参加者全員にズッキーニ1本のお土産をくれたのでした。

家に帰るとすぐ、伊達さんのおすすめ通り、ソテーにしていただきました。その味といったらもう!...先入観になってしまうので教えません。皆さんも、見学ツアーに参加して、自分の目と耳と舌で感じてみてはいかがでしょうか。

 

材料とレシピ
  • 自然栽培のズッキーニ    豊滝    8mile
  • 米油            深川   35mile
  • カムイ・ミンタルの塩(粒) 洞爺湖町 44mile
  1. ズッキーニのヘタを取り、厚さ7mmの縦切りにする。
  2. フライパンに米油をひき、よく熱する。
  3. 中火で焼き目がつくまで、両面を軽く焼く。
  4. 皿に盛って、粒塩をかけて完成。