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リンゴジャムと白老牛

EPISODE #36

リンゴジャムと白老牛

2017.7.25

食材調達,シーズン1

 100マイル地元食は、質素な食べ物だけを選んでいれば、案外、簡単に安く生活できます。北海道は本当に豊かな土地です。今の時期は、野菜も魚も米も酒も、必要最低限のものは揃います。

 すぐに手に入る食材だけで生きていくなら、それも悪くありません。だけど人間だから、ちょっとだけ贅沢したい時もあります。これが大変なんです。今回は、甘いものとお肉の話。

100マイル地元食が苦手なもの

 6月1日に100マイル地元食を始めてからほぼ買えていないものがあります。それは、甘い物と牛肉です。

 まず、甘い物は、原材料が多く、しかもほとんどの産地がわかりません。なので、100マイルルールを当てはめると、ほぼ買えません。なので、甘いものが食べたいときは、ほとんど妻にお願いするしかありません。

 それに、牛肉です。買えるかどうか判断するには、生産された市町村までわからないダメです。産地の市町村までわかる牛肉。そうです、〇〇牛と呼ばれるブランド牛だけです。しかしこれが高い。

 北海道には30種以上のブランド牛がいます。各産地が、ブランド評価を上げようと頑張っている結果、値段も高くなっています。つまり、牛肉は高くて買えないのです。

果樹園ロードの人気店

 洞爺湖の南岸、壮瞥町を走る国道453号は、いわば果樹園ロードです。今の時期はサクランボが旬。道沿いの多くの果樹園がサクランボのノボリを出しています。そんな中で、ひときわ多くのお客さんが集まる果樹園がありました。くだもの農家浜田園さんです。

 大型バスが何台も停まり、道内各地、それとアジアからもお客さんが来ています。皆さんのお目当ては、自家栽培の果物を使った、シュークリームやパウンドケーキ。でも100マイル範囲外の材料が使われていて買えませんでした。

 またダメか。そう思った時、並んでいるジャムを見ていた妻が興奮しています。砂糖もペクチンも入れていない、リンゴだけで作られたジャムがあったのです。100マイルルールで初めて買える、甘い加工品でした。決して安くはありませんが、嬉しくて2瓶も買ってしまいました。

白老牛は高嶺の花の高級肉

 壮瞥町を後にし太平洋に抜け、次の目的地の白老町を目指します。白老町は、涼しい気候と土壌の特徴から、畑作がしにくい土地でした。昭和29年から黒毛和牛「白老牛」の生産を始め、今では、年間1200頭が出荷される産地に成長しています。

 ここ白老町は札幌の我が家から100マイル範囲内なので、もちろんいつでも白老牛を買うことができます。ですが、札幌のスーパーでは、100g2000円、3000円はザラです。これは庶民の我が家には買えない。

 この日、白老町まで来たのは、産地ならもっと安く売られているのでは、と淡い期待があったからです。訪れたのは、指定販売店の農事組合法人牛の里というお店です。自社生産の白老牛の炭火焼きステーキのお店ですが、生肉の直売もしていました。

白老牛の安いところください!

 ショーケースを見て、ため息が出ます。産地に来ても高いものは高い。ヒレ肉のステーキは、100g3000円を超えていました。甘かったか。でも、順番に見ていくと、安い部位もありそうです。2000円、1000円。一番安いステーキ用の肉、赤身のヘルシーステーキが、100g972円です。

 南茅部の本マグロの半身、13000円を買うか迷った時のように目まいがします。普段は、100g100円以下の鶏や豚ばかり食べているので、信じられない高級肉です。家族で食べるには、最低400gは必要。そうなると、3888円...一食で?

 ここまで来たんだ手ぶらでは帰れない。歯を食いしばって注文します。他には、カレー・シチュー用の100g324円のすね肉、100g216円のすじ肉は多めに購入しました。苦しそうな表情で、安い肉ばかり注文してくる不思議な客、店員さんも同情していたハズです。

生活を彩るにはちょっとの贅沢も必要?

 帰りの運転では、高い買い物をしてしまった後悔と高揚感から、まったく眠くなりません。残り僅かの清水農園さんのサクランボを食べながら、気持ちをクールダウンさせます。

 俺、毎日白老牛を食べられるほど、ビッグな大人になるから。そんな馬鹿なことを言いつつも、少しずつ庶民の気持ちに戻ってきました。たまに食べるから贅沢で美味しいと感じるんだ。でもそれは生活をちょっと彩るぐらいがちょうど良いい。男らしい見事な負け惜しみです。

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