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甘みを求めて山を越え

EPISODE #22

甘みを求めて山を越え

2017.7.5

食材調達,シーズン1

 日本人は、塩と米、たっぷりの野菜と少しの魚があれば生きていけます。でも、それじゃあ毎日が楽しくありません。やっぱり甘いものはぜったい欲しい。特に、子供たちは育ち盛りですぐにお腹が減ってしまうので、おやつの時間の甘いお菓子は欠かせません。

 これが砂糖を探す旅の始まりでした。道外の方はあまり知らないかもしれませんが、北海道は日本で最大の砂糖の産地です。これは簡単に買えちゃって何にも面白くないかも。でも、甘い考えでした。今回は、砂糖を求めてスーパーを駆けずりまわり、山まで越えてしまったお話です。

最大の砂糖産地 でも100マイル内には?

 日本で消費される砂糖は、年間200万トンほど。その内、30%の60万トンは北海道で生産されています。想像もつかないほどの量です。ちなみに、他には6%がサトウキビのお砂糖、64%は輸入品です。

 そして、北海道の砂糖の原料になっているのが、ビートと呼ばれる “てん菜” です。畑作が盛んな地域に行くと、広大な畑一面にてん菜の大きな葉っぱが広がっているのを見ることができます。問題はその場所です。

 てん菜は、広い畑と涼しい気候が必要で、東部の十勝地域やさらに北東のオホーツク地域を中心に栽培されています。なので、てん菜から砂糖を作る工場も、その地域に多くあります。我が家から100マイルの距離では、十勝の西半分が入るぐらい。原料のてん菜まで100マイルに収めるとなると、東側の工場の砂糖は買うことができません。

ほのぼの印のほのぼのしてない現実

 しかし、唯一、100マイル内のてん菜だけを使い、100マイル内の工場で生産された砂糖がありました。札幌から南東の伊達市に工場がある、北海道糖業の “ほのぼの印” のお砂糖です。なんて簡単なんでしょう。早速、札幌の近所のスーパーに買いに行きました。

 1軒目、無い。別のメーカーの砂糖しかありまません。2軒目、無い。また別のメーカーのもの。3軒目、4軒目。ほのぼの印のお砂糖は全く見つかりません。それもそのはず、北海道は砂糖メーカーが乱立する激戦区。すずらん印やスプーン印にカップ印、札幌市内は、大手メーカーのお砂糖に独占されていました。

 北海道糖業のお砂糖は、我が家から一番近くで作られているのに買えない。不思議な体験です。砂糖を探し始めてから、すでに1週間が経っていました。

砂糖を求めて山を越え

 札幌市内で思いつくスーパーのチェーン店は全て回って、それでも無い。もう待てませんでした。北海道糖業の工場がある伊達市まで行くしかない。お義母さんと息子と娘を車に乗せ、札幌市民には馴染み深い中山峠を越え、蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山に見とれながら、南を目指します。洞爺湖を過ぎて太平洋に出ると伊達市はすぐそこです。

 北海道糖業の歴史がありそうな工場は、個人の工場見学を受け付けていません。工場の近くまで行って写真だけを撮ってきます。さあ、近くのスーパーに行って、砂糖を買って帰るか。しかし、信じられないことが起きました。

 工場のすぐ近くのスーパーでも、置いてあるのは他のメーカーの砂糖。しかも3軒回って全て空振り。工場がある町でも買えないなら、どこで売ってるんだ!子供が心配するほどぶつぶつ言いながら、それでも諦められず、町のスーパーを回って行きます。

地元を愛する地元のウロコ

 そして4軒目。伊達市と隣の洞爺湖町だけに4店舗だけ展開する地元スーパー、ウロコでした。ここがダメならもう帰ろうかな。店に入ると砂糖の棚に一直線、さあここはどうだ。グッ、思わず拳を握りしめます。ありました、探し求めたほのぼの印のお砂糖!男の子と犬、なんてほのぼのするパッケージなんでしょう。

 1kg入りのグラニュー糖と上白糖を合わせて6袋。ニコニコしながら買い物カゴに入れ、レジに持っていきます。レジのお姉さんも私の顔を思わず二度見するほど、不思議な客です。これで、我が家で心待ちにしている妻に堂々と砂糖を持って帰れます。

 100マイル地元食を始めたからこそわかった、この不思議なお砂糖のお話。白くて甘いだけの粉ではない、いろいろな事情が詰まった重たい袋を持ち帰るのでした。

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