水産ウィークの最終日は、広大な札幌市中央卸売市場での食材調達です。セリ場や仲卸が並ぶ中心部は一般人が入ることができない、プロフェッショナルの仕事場です。この日は、寿都町の大串さんが事前に手続きをしてくれて、特別に入れてもらえました。

北海道で獲れた魚、外から運ばれて来て北海道で消費される魚。普段、スーパーに並んでいる魚たちが、誰の手によって、どう届いたのか、ようやく全てがつながった、そんな素晴らしい体験でした。

そして、諦めかけていたあの高級魚との運命的な出会い。水産ウィークの締めくくりにふさわしい大冒険です。

早朝の卸売市場に立つ3人の魚好き

寿都町の大串さん、魚食の専門家の青木君、昨日遅くまで打ち合わせに付き合ってくれた2人と朝4時半に札幌市中央卸売市場で集合します。広い場内には、水産棟と青果棟があります。水産棟には、魚が入った発泡スチロール箱が所狭しと並んでいて、市場内専用の車のターレー、そして多くの人々が慌ただしく行き交う、活気溢れる市場です。

私と青木君は見学者用の帽子をかぶり、働く皆さんの邪魔にならないように、ですが、ウキウキはしゃぎながら大串さんに導かれ、セリ場に入っていきます。日本だけでなく世界から集まった魚介類が並んでセリを待っています。

北海道産では各地の漁港から集まった、時鮭、サクラマスにブリ、黒ソイ、青ソイ、縞ソイ、カレイやヒラメ、フグまでいます。聞いたことが無い産地、食べたことが無い魚がたくさんいます。スーパーでは買うことができない珍しい魚も、確かにここ卸売市場までは届いているのです。

市場は、熱い魚のプロたちの仕事場

大串さんは、我々2人と違い、仕事でここに来ています。寿都漁港から出荷されたブリの市場での評価を確認することです。寿都町では、大串さんを中心に、ブリなどの魚を、獲れた船の上で血抜きをし、鮮度を維持して出荷する、船上活〆の普及に取り組んでいます。

この取り組みは徐々に仲卸の皆さんからの支持を得て、最近はセリ値が上がってきているそうです。地道ですが、寿都の漁師さん、流通にかかわる皆さん、さらに消費者にもメリットがある、素晴らしい取り組みです。食べて応援したい。

そして、セリが始まる時間です。一気に場内の緊張感が増し、張り詰めた空気で満たされます。いくつかの場所で同時に大きな声が上がります。札幌市場では、セリ参加の権利を持つ仲卸の担当者が、札に入札金額を書いて見せるスタイルです。セリ人が、拡声器を使って落札金額と落札業者を呼んでいきます。

目まぐるしいスピードで進んでいくセリ。セリ人と仲卸さんの人だかりが、並んだ魚の箱を挟んでどんどん動いていきます。改めて、魚介類の流通に多くの働く人が関わっていると思い知らされます。

探し求めた高級魚 北海道産本マグロ

市場に来たら確かめたかったことが1つありました。それは、我が家から100マイル内で獲られたマグロがいるのかどうかです。

我が家のもうすぐ6歳になる息子がマグロが大好きです。数年前、回転ずしで子供用サビ抜きマグロ握りで味を覚え、何か頑張った日のご褒美にマグロをせがむようになりました。しかし、100マイル地元食を始めてからは、我が家から100マイル内でマグロが獲れるのかわからず、息子のお願いは受け流してばかりでした。

札幌市場では、マグロは他の魚たちと違い特別な部屋でセリが行われます。そこには、鳥取の境港や、遠くはインドネシアから集まったマグロたちが並びます。部屋の一番奥、比較的小ぶりな氷で満たされた箱が並んでいました。そこに、いました。北海道の道南地域、函館の北東にある南茅部町の本マグロです。本数では全体の10分の1以下、3人とも聞いたことが無く、初めて見る産地のマグロでした。

しかし、問題があります。私はただの見学者としてそこにいる人間。セリへの参加はできません。目の前に並んでいる100マイル内マグロが買えないのです。これも市場で働く方たちのルールです。ここは引き下がるしかありません。

ここでセリ落とされた南茅部の本マグロの行き先を絶対に突き止めて買ってやる。ぐっと歯を食いしばり我慢しつつ、次の作戦を考えます。私たちは諦めていませんでした