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命をつなぐ星の塩

EPISODE #6

命をつなぐ星の塩

2017.6.11

食材調達,シーズン1

 100マイル地元食への移行期間の1週間は、多くの調味料に別れを告げていく1週間でした。あと数日で調味料が使えなくなる。そんなとき、一番不安に感じたのはです。塩が無ければ人間は生きていけません。

全ての料理の基本は塩

 我が家には、私と妻、子供が5歳と3歳と産まれたばかりの0歳の3人、産後の妻のヘルプ役で来てくれているお義母さんがいます。つまり、大人3人に、子供3人。

 現代日本人の大人は、平均で1日10gの塩を食べているそうです。でも、厚生労働省は、成人男性が8g、成人女性が7gを目標量にしています。仮に子供3人で成人男性1人分と考えると、我が家は1日30gの塩を食べなくてはいけません。言い換えると、1日30g分の塩を探して買うか、自分たちで作らなければいけません。

 この特殊な食生活を始める前は楽でした。我が家にも、醤油、味噌、ソース、ケチャップ、豚丼のタレにめんみ(どちらも北海道で愛される調味料)、何でもありました。他にも加工食品は最初から味付けされています。つまり、塩をどれだけ使うかを意識しなくても、塩分を摂れていたのです。

 でも、もうこれからは違います。塩分は塩そのもので摂る必要があるのです。加工度合いが高い市販の調味料は、いくら探しても、100マイル範囲内だけの原料で作られたものはありません。これからは、肉も魚も、サラダもスープも、全ては塩味。塩が全ての料理の基本になったのです。

100マイル範囲の半分は海

 我が家がある札幌から100マイルの範囲は半分が海です。日本海と太平洋、両方の海に大きな範囲を占められています。最初は、この現実を恨みました。陸がもっとあれば、肉も野菜も牛乳も、米に麦ももっと手に入るのにと。

 しかし、塩のことを考えるとこれはありがたいことです。どうやら岩塩が採れないらしい北海道では、海水塩だけが地元産の塩です。塩を作っている人が近くにいるかもしれない。もしいなくても、自分たちで海水を汲んで作ればいい...

塩作りキャンプのしょっぱい思い出

 遡ること2年、札幌の北西の積丹半島にあるキャンプ場で、夏の海キャンプをしました。その時、すでに一度、海水から塩を作ってみたことがありました。いつかやってみたいと長年の夢だった男の憧れでした。この時の私はまだ怖いもの知らずでした。

 理想の光景とは程遠い、延々と続く海水を煮詰める作業。水分が減るにつれて、塩が弾け、焦がさないように混ぜている手に飛んできます。手を真っ赤にしながら、やっとの思いで塩の結晶が採れた時には、キャンプの夕飯も終わり、子供たちはテントの中で寝息を立てている時間でした。

 しかも、その時できた塩は10リットルの海水からわずか、一握り。あんな大変な思いはもうしたくない。

星の塩との運命の出会い

 実は、2年前の海キャンプの際、ふらっと立ち寄ったある道の駅で、ある塩と運命的な出会いをしていました。積丹半島の西の付け根にある、岩内町で作られた星の塩です。岩内町が町をあげて汲み上げている海洋深層水を、漁師の金澤さんが特製のかまどで煮詰め、塩にした商品です。

 すでに、海水から塩を作るという永遠に感じる作業を経験した私には、星の塩のありがたさが身に染みてわかりました。その後も、星の塩のことは忘れられませんでした。あの塩があれば、100マイル地元食は始められる。そんな自信がありました。

 ある雨の日、札幌から車を2時間かけて運転し、あの日と同じ海沿いの道の駅、オスコイ!かもえない(85㎞、53マイル)に行きました。私を2年間待っていた星の塩を感慨深く見つめ、一つずつ大切に、そして大量にカゴに入れていく私。きっと店員さんの目には気持ち悪く映ったに違いありません。

 価格は、100gで330円。決して安くはない、高級塩です。ですが、我が家にとっては命をつなぐ塩。大切に使います。

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