我が家が100マイル地元食の新しい食生活を始めて1か月。今回と次回は、6月の1か月間を前後半で振り返ります。

特別な日、挑戦の始まり

2017年の6月1日は、私、妻、長男(5)、長女(2)、次男(0)にとって特別な1日でした。5月末に3人目の子供、次男が誕生しました。1週間の産後の入院を終え、妻と次男が我が家に帰ってきたのが5月31日。6月1日は、新たな生活の始まりでした。

そして、もう一つ大きな変化、我が家にとっては1年間の新たな食生活への挑戦の始まりでもありました。自分たちから半径100マイル(160.9㎞)以内で生産された食べ物だけを食べて生きていく。今までの我が家の食生活とは全く違う、無謀とも言える挑戦。私たちを一歩踏み出させたのは、それまでの食生活への疑問でした。

食品業界で働き、それなりに忙しい仕事の日々。限られた時間の中で、次第に食べ物への気を配る余裕がなくなっていきました。食べ物の仕事をしていながら、自分たちの食生活は決して満足できるものではなかった。かつてカナダで出会った「100 Mile Diet」の日本版に、ここ札幌で挑戦したい。もはや迷いはありませんでした。

食べられるものが無い

6月1日、家に残っていた食品たちを並べ、100マイル地元食ルールで食べられるものだけを残した時、衝撃を受けました。残ったのは、米、生野菜や昆布だけ。このままでは、到底生きてはいけません。足りないものはすぐに買わなくてはいけませんでした。

中でも焦ったのは塩です。成人は、1日10gの塩を食べなくては健康が保てません。私たちから100マイル以内には広大な海があります。塩は必ずあるはずでした。そして、出会ったのが、日本海の岩内町の海洋深層水で作った星の塩でした。これがあれば、まずは生きていける。

そして、いくつもの近所のスーパーを駆けずり回り、とりあえず生活に必要な、油、小麦粉、牛乳、卵、魚、肉、野菜を手に入れることができました。真っ暗だった目の前が少しだけ明るくなった気がしました。

生産者から直接買う喜び

今後もスーパーだけで食べ物を買うのであれば、100マイル地元食を始めた意味はありません。買い方を変えず、買う物だけを変えるだけでは、新たな感動や喜びはありません

できるだけ、産地に行き、その食べ物を作った方、強い思い入れを持っている方から直接買いたい。そこにこそ、かつての食生活で見失っていた食べる事の喜びが見つかるのではないかと信じていたからです。

最初に訪れたのは、留寿都村(るすつむら)の吉川さんのよしかわファームでした。羊蹄山を望む広大な畑で、じゃがいも、スイートコーン、大豆など、多くの作物を育てていました。留寿都の道の駅の直売所で、吉川さんが昨年収穫された大豆長いもを購入するのでした。

高校の頃からの友人の青木君と、魚を求めて、寿都町(すっつちょう)にも行きました。寿都町漁協の直売所では、寿都町役場の大串さんと運命的な出会いを果たしました。漁港のすぐそばにある直売所で、産地の方から直接買う。また、普段の買い物では見かけることもない、金ボラことメナダを買うこともできました。

神恵内村の漁師さんが目の前の海で獲れた貝類を直売しているお店、三浦漁業部にも行きました。定休日だったにも関わらず、お母ちゃんはわざわざ漁協の水槽までカキを取りに行って売ってくれました。

産地まで行って買うことで、意外な出会いや驚きが生まれ、今まで体験したことが無い喜びや感動が味わえる。この食生活の確かな手応えを感じたのでした。

足りないものを工夫と愛情で補う料理

ただ、素晴らしい食材を買ってきたとしても、美味しく料理できなくては喜びは半減です。しかし、今まで我が家に大量にあった調味料やスパイスたちは、ほぼ全てが100マイル範囲外からきたもので使えません。塩だけを使って、素材の味を引き出して料理するという、無理難題に挑戦していきました。

ハーブもコショウも無いのに、ミネストローネを作りました。豚肉や玉ねぎなどの食材を細かく切り、じっくりと火を通すことで旨味や甘味を引き出していきました。平取町のトマトジュースと札幌市内の赤ワインを使って仕上げたスープは、想像以上に美味しく仕上がりました。

子供たちの無茶なお願いに応えようともしました。うどんが食べたいと泣きわめく娘に、生まれて初めて小麦粉からうどんを打ちました。ですが、醤油もみりんも鰹節も無く、つゆを作るのにはとても苦労しました。日高昆布、時鮭のあら、たもぎ茸で作ったつゆに、娘の反応は冷ややか。一口しか食べてくれませんでした。

そして、寿都漁港で買った魚や、札幌市場で買った南茅部の本マグロは刺身でいただきました。食材に力があり、むしろ塩だけで食べる事で、本来の味をさらに感じることができる。そんな素晴らしい体験をすることもできました。

これだけ中身の詰まった最初の1か月。多くのことを感じ、考えることになりました。それは次回の6月ダイジェスト後半で。