日高の東静内の高槻商店で出会った幻の高級深海魚、コウジンメヌケ。春の嵐の中、札幌の我が家まで持ち帰ると、家族が笑顔で出迎えてくれました。子供たちも、青木君との再会を楽しみにしていました。いつお美味しい魚を持って来てくれる楽しい友人です。

今回は、水産ウィークの3話目、初めてのコウジンメヌケの個性的な味のお話です。

 

コウジンメヌケが我が家に来た

コウジンメヌケの2kg近くはありそうな半身と、大きな頭をクーラーボックスに詰め込んで、帰りの車内では青木君とどう食べようか、作戦会議が続きます。まず刺身は外せない。大きなカマは焼いたらどうか。このひと時も魚の買い物の醍醐味です。

我が家に着くと、妻と子供たちが青木君の到着を待ちかまえていました。普段から子供向けのお魚教室の講師をしている青木君は、昨年の滞在で長男(6)と長女(3)のハートもすでにがっちりと掴んでいます。

「どんなお魚、買ってきたのー?」

キラキラした好奇心を見せる子供たちの前に、コウジンメヌケを大事に並べます。大人の私でさえ初めて知った幻の深海魚です。自分の頭より大きなメヌケの頭を見て驚く子供たち。彼らにとっても貴重なお魚教室になりました。

コウジンメヌケの即席お魚教室
コウジンメヌケの即席お魚教室

 

ベニアコウのちょうちん行列

「ベニアコウのちょうちん行列を見たら人生が狂う」

青木君が教えてくれた言葉です。コウジンメヌケはベニアコウとも呼ばれます。ベニアコウを釣る時は、船上から1000mの海底まで仕掛けを落とし誘います。遥か海の底で僅かなアタリを感じ取って巻き上げると、水圧差でベニアコウの浮袋が膨れて、勝手に浮き上がってきます。

何匹もかかっていれば、赤いベニアコウのお腹が列になって海面に浮かびます。これが「ベニアコウのちょうちん行列」。一度この感動を味わえばベニアコウ釣りの虜になってしまうそうです。私はこの釣りに手を出さない方が良さそうです。

さて、時間はすでに夕方。急いで夕飯の準備をします。この日は簡単に、コウジンメヌケのカマ焼きとお刺身を作ることにしました。青木君が、大事に持参してくれた出刃包丁と刺身包丁で、手際よく切り身にしていきます。

 

刺身はあっさり上品で控えめ

メヌケの淡いピンク色をした白身の中には、深海で蓄えた脂が白いサシのように走っています。カマは、シンプルに塩だけで味付けをして、200℃に熱したオーブンで焼きます。少しだけ焼き色がついたら、後は予熱で中まで優しく火を通します。

カマをオーブンで焼く
たっぷり身がついたカマをオーブンで焼く

刺身は歯応えを楽しむために薄めに切ることにしました。大きな刺身を大きなお皿に盛り付けたら、さあ、お待ちかねの夕飯です。青木君も私も初めて料理する魚です。どんな味なのか、想像がつきません。でも、大枚をはたいたことを考えれば、自ずと期待は大きくなります。

まずは、刺身から食べてみることにしました。身の食感は軟らかく、脂を多く含んでいるはずなのにクセが無い、さっぱりと上品な味がします。あっさりと食べやすく美味しいのですが、あの派手な値段のイメージとは違って、意外なほど控えめです。

コウジンメヌケの刺身
コウジンメヌケの刺身

 

カマ焼きから溢れ出す脂

でも、刺身の時の落ち着いた印象は火を通した瞬間に一変しました。オーブンの中で程よく焼けたカマに箸を入れると、しっかりした弾力で押し返してきます。それまで奥に隠れていた脂が熱で溶けて、一気に溢れ出てきます。

カマ焼き
旨味たっぷりの脂があふれ出すカマ焼き

食欲を誘う豊かな香りの脂に包まれた身はしっとりとして、口の中でほどけていきます。刺身のシンプルな味が好きな長男は刺身を、はっきりした味が好きな長女はカマ焼きばかり食べています。私はまったく違う二つの顔の両方が気に入りました。

お腹いっぱい食べても、まだたっぷりと残っているコウジンメヌケ。明日はどうやって食べようか、大人たちの話し合いが続きます。でも、この時点で2日目に漁船に乗る計画は春の嵐のために絶望的になっていました。

2度目の水産ウィークは、幻の深海魚を食べて終わりかな。少しだけ弱気になっていました。

 

材料とレシピ

紅神目抜のカマ焼き(4人分)

  • 紅神目抜のカマ 400g 東静内
  • 星の塩 5g 岩内
  1. 紅神目抜の半身から、多めに身をつけてカマを切り取る。
  2. オーブンを200℃に予熱する。
  3. カマの全面に塩を振る。
  4. 3をオーブンで20分ほど焼く。
  5. 表面に焼き色がついたら火を止めて、10分ほど予熱で火を通したら完成。