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EPISODE #99
【お料理】個性派な魚との正しい付き合い方
寿都漁港で買えたのは、サバだけではありませんでした。他にも珍しい魚、ボラを買うことができました。個性的なこの魚をどう料理したらいいかのかわかりません。
まずは、長男(6)のためにちょっとだけ刺身にします。が、なかなか個性的な味がしました。これはどうしたものか。今回は、ボラにぴったりの料理法を探したお話。
寿都漁港のボラに出会ったのは、これが初めてではありません。6月の水産ウィークで、高校からの友人で、魚をもっと食べようと活動している青木君と、寿都を訪れた際、ボラに初めて出会いました。でも、その時のボラは金ボラ。正式には、近縁のメナダという魚でした。
でも、メナダの旬が初夏なのに対して、ボラの旬は秋から冬。まさに今なのでした。青木君は、世の中であまり認知されていないボラを、人生をかけて広めたいと本気で考えているようです。私も、なんとか美味しく食べる方法を探してあげたい。美しい友情です。
50cmはある立派なボラは、まな板の上に収まりません。大きなウロコは剥がすと飛び散るし、骨が硬いから3枚おろしにするのも大変です。それに見た目。どちらかと言うと魚顔の私は、以前、「ボラに似てますね。」と言われたことがあり、いざ捌こうと思うと複雑な気分になります。
まずは、青木君も勧めていた刺身で食べる事にしました。長男は、私が寿都に買い物に行く度、夕飯に刺身が出ると期待しています。彼の気持ちは裏切りたくない。でも、捌いている時から、ボラ特有の香りと言うか、クセが気になっていました。
クセを消すために、昆布じめにしました。プリプリした白身に軽く塩を振って、濡らした昆布に挟んで、ラップで巻いて冷蔵庫に一晩入れておきます。そうすると、身の余分な水気を昆布が吸ってくれる代わりに、昆布の旨味と香りが身に移ります。
さらに、剥がさないでおいた皮をガスコンロの火で炙って、焼霜造りにしました。これだけやれば、クセも無く美味しく食べられる...喜んで食べたのは長男だけでした。やっぱりちょっと匂いが気になります。私と妻は、もっぱら活甘エビと青ツブに夢中です。
生臭いわけではないのですが、青臭いような独特の香りです。青木君のようにボラが好きな人には、たぶん個性的でちょうど良いアクセントなのでしょう。さて、どうしたものか。大きな魚ですので、まだたっぷりと身が残っています。
青木君に聞いたところ、フライにしても美味しいと教えてくれました。ここは、北海道らしく、塩ザンギにします。塩、砂糖、酒、おろししょうがで下味を付け、卵、片栗粉、小麦粉も衣を絡めて、米油で揚げました。
個性的なボラの風味に負けないよう、甘酢ソースも作ります。煮切った酒、十勝ヒルズのながいも酢、自家製トマトケチャップ、塩と砂糖で味を調えます。みじん切りのネギと、おろしショウガも加えておきましょう。これで完璧なはずです。
甘酢ソースの鮮烈な味を、塩ザンギの衣の香ばしさと、ボラの個性がしっかりと受け止めて、素晴らしいバランスです。こう料理すると、脂がのった旬のボラの個性が、嫌味なところは全くなく、際立って感じられます。クセは消すのではなく、受け止めてあげるのが正解だったのです。
地元の漁港に通うことで、馴染みが薄い、珍しい魚に出会えるようになりました。そんな個性的な魚を美味しく食べるには、ぴったりの料理法を探してあげないといけません。一度食べて苦手だなあと敬遠してしまえば、本当の美味しさに届く前に諦めることになります。
100マイル地元食を始めてから、輸入品の紅鮭や塩サバのように、いつ食べてもそれなりに美味しい魚が買えなくなりました。今では、足元で光を浴びていない魚をいかに美味しく食べるか。ここに面白みを感じています。個性的な我が家と個性的な魚。クセが強い同士、ぴったりの組み合わせです。
ボラの昆布絞め焼霜造り
ボラの塩ザンギ
甘酢ソース