©100マイル地元食
EPISODE #26
釣れた日の魚ご飯
北海道-道央エリア
7月
これまではただの趣味だったものが、100マイル地元食を始めたことで、家族から感謝されるものがありました。その1つが釣りです。
釣りは、休みの日に長い時間、家を空けてしまいます。夜の釣りから帰ってくるといつまでも昼寝をして、家事を手伝いません。釣りをする父親は、家族の理解を得るのが大変です。
でも、今の我が家では事情が変わりました。釣りは食材調達。100マイル内で釣った魚は、全て100マイルルールを満たしています。そして、魚を釣って帰ってきた日に、決まって作るのが魚ご飯です。
私の趣味の中で、最も長く続いているのが釣りです。私が中学生だったころ、野球部の友達が教えてくれました。その頃は、横浜に住んでいて、行くのはもっぱら横浜港大黒ふ頭でした。ベイブリッジの真下で釣る、都会派釣り少年でした。
それからは、しばらくは釣りから離れていました。再び陽の光を浴びたのは、北海道に来てからでした。北海道は、どこでも、どんな魚でも釣れる、釣りパラダイスです。そして、本当にきれいな海で育った魚は、本当に美味しい。家族もそれを知っています。
北海道での釣りの師匠に誘われ、夕方から室蘭港へ向かいます。この日は大潮と言って、潮の動きが大きく、魚もやる気になるビッグチャンスでした。日没から釣りを開始。狙うのは、海底にひそむ、ロックフィッシュという、ソイやアブラコ、カジカなどです。
エビや小魚に似せたルアーを投げ、生きているかのように動かし誘います。モゾモゾ、グングン、ガツン、魚がルアーに食いついた動きが、糸を通して手に伝わります。一気に竿を引き、合わせると、魚との格闘が始まります。この瞬間、狩人の本能がむき出しになり、気分は最高潮です。30㎝オーバーの見事な黒ソイでした。
その後、ポイントを移動します。1時間ほどかけて苫小牧港へ。ここでは、今が旬のマメイカを狙います。港の明かりに集まったイカが、群れで泳いでいるのが見えます。コツをつかむと釣れる釣れる。あっという間に11匹も釣れました。そして、この夜、夜明けの最後のチャンスに釣れてくれたのは、カジカでした。
徹夜の眠気も、釣れた喜びで吹き飛びます。家に帰ると、子供たちが出迎えてくれます。黒ソイ釣れた?息子が聞きます。彼は、すでに黒ソイの美味しさの虜です。タイがあまり獲れない北海道では、ソイは重要な白身の魚です。タイと比べられるほどに旨い。
黒ソイが釣れた日に必ず作るのが魚ご飯です。黒ソイを3枚におろし、頭と骨でダシをとります。このダシで炊いた炊き込みご飯が、魚ご飯です。新鮮でしっかりとした処理をした黒ソイは、全く嫌な臭いがしません。土鍋のフタを開けた瞬間の湯気、爽やかな海の香りです。
今日は、大漁なので、もっと作ります。マメイカは、刺身、茹でイカの山わさび和え、ガーリックバジルソテー、新鮮な方が美味しいイカはこの日のうちに全部食べてしまいます。
そして、カジカは、やっとできた100マイル味噌を使って、味噌汁にします。カジカは、別名”鍋壊し”。箸で鍋を突っつきすぎて鍋を壊してしまうほど、美味しいからです。昆布ダシに、カジカ、大根、ネギ、ニンジン、しめじを入れ、味付けはたっぷりの味噌です。
魚ご飯は、3合炊きました。いつもの白飯なら、3合だと少し残ります。この日の魚ご飯の減りの早いこと。黒ソイの旨味、ほんのり塩味、最後に入れた三つ葉と青ネギの爽やかさ。おかずが山ほどあるのを忘れ、魚ご飯を一気に食べてしまいます。
そして、イカ3品です。コリコリした歯応えの刺身。美味しい。でも、残りの火を通した2品には適いませんでした。マメイカは、加熱すると歯応えと旨味が増します。イカそのものの風味が楽しめる山わさび和え。濃厚でガツンとくるガーリックバジルソテー。
最後に、カジカの味噌汁です。改めて実感します。日本人は、発酵食品がないとダメなんだ。ただでさえ美味しいカジカのダシに、発酵された大豆と米糀の旨味が加わります。柔らかくなった野菜に味がしみています。
家族がこんなに喜んでくれるなら、毎日だって釣りに行かせてもらっていいのに。ですが、そうはいかないのが父親の難しい立場です。
魚ご飯
マメイカの刺身
マメイカの山わさび和え
マメイカのガーリックバジルソテー
カジカの味噌汁