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マグロのキッチン解体ショー

EPISODE #19

マグロのキッチン解体ショー

2017.6.30

お料理,シーズン1

 ついに出会えた我が家から100マイル範囲内で獲られた南茅部の本マグロ。大串さんと青木君の協力と、いくつかの幸運が重なって、今、私が抱きかかえる箱に入っています。胸を張って押すインターフォン。妻とお義母さんと息子と娘が出迎えてくれます。

 今日の収穫を一番期待していた息子。大きな発泡スチロール箱を見てすぐに気づきます。マグロ買えたのー!?太古の昔から、狩りの獲物を持って家に帰る父親の心境は共通しているかもしれません。

 お父さん、やったよ。マグロ買えた。今日はお刺身だね。息子の顔から笑顔が弾けます。やったぁ!マグロと氷でずっしりと重い箱を、息子も手伝ってキッチンに運び込みます。ですが、まだ仕事は残っています。半身のマグロを解体しなくてはいけません。

青木君のキッチンマグロ解体ショー

 解体作業に着手したのは、息子が幼稚園から帰ってきてから。晩御飯にマグロの刺身を食べるため、マグロを切り分けていきます。私は、マグロを捌いた経験がありません。ここは、魚食の専門家、青木君の出番です。

 横浜から出刃包丁と柳葉包丁を持参している青木君。聞けば、彼もマグロを1人で解体するのは初めてで、緊張している様子。しかし、息子と娘が期待の眼差しでテーブルにかじりついているのに、頑張らないわけにはいきません。

 まずは、半身の頭側の部分、胸ビレと腹ビレをつなぐ線でカマを切り取ります。迷いのない包丁で一気に引き切ります。私からのリクエストでカマにたっぷりと身を残して切ってもらいます。

 次に、硬いウロコの部分を包丁できれいにそぎ落とします。水族館でマグロを見てると肌がツルツルでウロコは無いものと思っていました。でも違いました。部分的にですが大きく分厚いウロコが皮の下に隠れています。

 そして、半身の真ん中の血合いに沿って包丁を入れ、背側と腹側に分けます。次に、刺身のさくを取るため、15㎝ほどの長さに切っていきます。小さめですが、テレビでよく見かけるマグロの塊です。

 捌いたばかりのマグロの身は、淡い赤からピンクへのグラデーションで、きらきらと輝いています。血合いを取り、腹側は大トロ、中トロ、赤身、背側は中トロと赤身に切り分けます。だんだん、スーパーで見かける刺身のさくの形になってきました。高いマグロです。ちょっとずつ食べるため、小さめのさくにしてとお願いします。

 熱い視線のギャラリーと、注文が多いスポンサーの応援を受け、青木君の作業も大詰めです。見事、大トロ、中トロ、赤身で合計15本のさくがとれました。自分たちで解体して初めて気づいたことは、マグロには我々一般消費者まで流通してこない、その他の部位がいっぱいあること。カマ、皮、血合い、筋、尾の身、しかも刺身にできる身と同じくらいの量が出ます。

待望の100マイルマグロの刺身

 今日の夕飯は、皆が待ち望んだ、そして半ば諦めていた100マイル範囲内のマグロの刺身です。謙虚に赤身だけを刺身にしてもらいます。これまで食べてきたマグロよりも、透明感がある赤でつやがあります。

 待ちきれない我が家の面々。いただきますの合図とともに、刺身に手が伸びます。醤油とわさびが無いので、いつも通り、塩と山わさびでいただきます。しっかりとした歯応え、赤身の酸味と渋みの先に、甘みと旨味が待っています。鼻に抜ける香りは清々しく、山わさびの刺激と合わさって、しっかりと感じます。これは美味しい。

 この刺身の凄さ、ありがたさ、そして値段をわかっている大人たちは、ゆっくりと噛みしめて味わいます。感想を言い合い、笑顔を交わします。それを横目に、息子の刺身を食べるの早いこと。これを逃せばもう一生食べられないとばかりに、制止する手を押しのけて、バクバクと食べていきます。

 焦る親。ですがやっぱり嬉しい。親にとって、お義母さんにとって、そして捌いてくれた青木君にとって、子供が、美味しそうに夢中でご飯を食べてくれることが、何よりも嬉しい。苦労した甲斐がありました。

 残ったマグロたちは、家庭で真空パックができる機械と、家庭用としては一番温度が下がる冷凍庫のセットで厳重に保管します。マグロは、凍らせるときの急速冷凍と、保管時の低温が無いと、鮮度が落ちてしまいます。この貴重なマグロをできるだけ長く楽しみたい。祈るような気持ちで冷凍庫に入れていきます。

 もし、このマグロを全部食べ切った時、その時は、南茅部を訪れ、実際に獲られている景色の中で、漁師さんから買いたい。そう誓うのでした。

材料とレシピ

南茅部の本マグロ刺身

  • 本マグロ 南茅部 79Mile
  • 星の塩  岩内  39Mile
  • 山わさび 留寿都 31Mile

  1. 魚食の専門家にマグロをさくまで捌いてもらう
  2. 1cm程度の厚さに切り、盛り付ける
  3. 山わさびをおろして添える

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